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マックイーン:モードの反逆児のyukieのレビュー・感想・評価

4.5
マネキンが着る服を観て
涙が出たのは初めてです。

服そのものがエモーショナルなのだ
という感情を初めてもちました。

一人の人間が真に命を削ってつくった
重み、憂い、儚さと美しさを持つ“服”。

小説家という仕事は、
自分の内面や体をもぎとって他人に見せるような仕事であると
誰かが言っていたのですが
まさに、マックイーンも
詩人として、彫刻家として、職人として、
自身の体験と思想と知性、個性、孤独も、生活も、愛情も
洗いざらい身も心もすべて
もぎ千切りながら、服に変え、商人としても
成功をおさめた人物です。

彼は“ただの服”としゃれるのですが、
1995年の“ハイランド・レイプ”
から始まる数々のショーは、
完全に服の域を超えた芸術作品で
花畑くそったれ!(彼も植物をモチーフにすることはもちろんありますが)
という感じで、世界の、社会の、人間の
渇き、罪、飢餓感、鬱積、残虐性、怒り、窒息
ときには、未知の宇宙、ユートピアまで、
常に新しい切り口で表現されています。
無限に求め続けられるなかで、
消費される才能。
やりたかったことが
やりたくないことになってしまう悲劇。
それが一人の人生に及ぼした影響が
彼の大切な人々の語り口で描かれます。

ハイブランドをもつもたないに関わらず、
すべての人を震わせ感服させる力をもつ
リーの人生。そして彼の生み出すファッション。

予告で聴いたマイケル・ナイマンの曲が
良いなと思って、
何気なく観にいったのですが
胸に迫る内容でした。
孤独大臣をつくるくらい
孤独を社会問題として向き合う
イギリスならではの後感があります。
天才マックイーンの孤独とは。
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