YukoK

記者たち~衝撃と畏怖の真実~のYukoKのレビュー・感想・評価

4.2
「バイス」と合わせて鑑賞。
情報に対してそれは真実か?と常に問うこと。発信者の意図を汲むこと。同時に「基地のある街に読者がいる」「我が子を戦場に送る者の味方になる」ーー自分が発する情報の向こう側にいる人への想像力と誠意を常に持ち続けること。マスコミでも、SNSでも。発信するときも、受け取るときも。とにかく身が引き締まって、当たり前だけど大事なことに改めて気づかされた。
映画の中で一番かっこいいのはボス。とにかく現場の記者の話に向き合い、鼓舞し、先に他紙に書かれても「抜かれた悔しさを忘れるな」とだけ言い残す、さらに自社の記事を使ってくれない他社に自ら乗り込む。こんなボスの下だから記者もプライドを持ちつづけて頑張れるんだろう。
正しいことを報道していても、イラク戦争は始まり、兵士と民間人の命は犠牲になった。後からいくら「ナイトリッダーが正しかった、NYタイムズは間違っていた」と言われても、戦争を止められず命を救えなかったという現実を変えられなかった自責は残るんじゃないか。
そして映画の中で、ナイトリッダーの味方になってくれるのは妻や彼女、一部の取材先だけ。読者の姿は一切描かれない。それがなんとも辛い。メディアが存在意義をもつのは読者の存在あってこそで、社会が動くのも記事を読んだ読者が声を上げてくれるからこそ。実際に現実に影響を及ぼせなかった以上仕方がないのかもしれないけど、読者からのリアクションがなければやりきれないな、と思った。
歴史は繰り返す。ベトナム戦争時はまだ生まれていなかったけど、検証と反省をしたはずではなかったのか。「なぜ戦争をした?」という冒頭の問いかけを忘れないようにしたい。
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