無差別イイネは咒殺

宇宙の法―黎明編―の無差別イイネは咒殺のレビュー・感想・評価

宇宙の法―黎明編―(2018年製作の映画)
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【CAUTION】信者ではありません

豪華絢爛!お金をじゃぶじゃぶつぎ込んで描かれる、前代未聞のスペクタクル!

アニメーションとして、またシリーズモノの第1作としては、普通に面白かったというのが正直な感想です。

宗教法人「幸福の科学」製作のアニメ映画のチケットをいただき、「話のネタにでもなればいいな」なんてイジワルな動機で観に行ったら、その意味でも1,800円分の価値のある作品でした。

舞台は大学「ナスカ・インターナショナル」に通う主人公たちの学園生活から始まる。

冒頭からテレビのニュースや読んでる本に作り手からの明らかな問題提起をビシバシ感じながら、もうジワジワきてるゾ〜なんて思うのですが、すぐにそんなプロパガンダへの警戒も吹っ飛ぶ。

「研究室でのUFOの開発、また失敗しちゃった!」

ん?UFO?

実はこの作品、『UFO学園の秘密』の続編なのだ。

「お前、進路どうすんだよ!

俺はUFOの研究をして来たるべき宇宙人襲来に備えて、
彼女は信仰を広め、
お前は法を学び総理大臣になって自衛隊を指揮してこの星を守るんじゃなかったのか!」

この時点で、完全に世界観がブッ飛んでいるので、逆に変な警戒心は抜けていった。

そこで『ザ・フライ』のラストみたいな巨大な昆虫が現れ、こう言う。

「助けてください!」

そして唐突に外国での、残虐なエイリアンによる家畜惨殺事件が発生。

おじいちゃんが散弾銃をブッ放す!

もちろん凶悪エイリアン軍団はブチギレ、村の大虐殺が始まろうとする。

そこで、どうやら変身したらしい先の学生たちが現れ、魔術のようなものでバッタバッタとエイリアンたちを倒していく。

そう、どんどん思ってもいない方向へ話が進んでいくのだ。(前作を見ていないからいちいち驚くのだろうが、この衝撃の展開の連続はとても楽しい)

しかしまだまだこんなものでは終わらない。

地球の支配を目論む男児が現れ、1億8,000万年前の地球にタイムスリップすることになる。

普通タイムスリップモノの映画で遡るのってせいぜい数十年から数百年程度だと思うのだが、1億年以上という過去に前例を見ないほどに時空をジャンプするため、着いた先には恐竜的な生物がウジャウジャいる。

そして、アバター的な人類もいるのだが、エイリアンから彼らを守るため、敵であるエイリアンのザムザ(千眼美子=旧清水富美加)と手を組む。

このザムザというキャラクターが強烈で、この要素だけでも一見の価値ありである。

「肉食系宇宙人」というキャラ紹介を事前にどこかで見て、スピーシーズ的なエッチな宇宙人だと思ったら、部下がヘマしたら丸呑みする。ご飯もお肉しか食べない。
いやそっちの肉食かよ!

キャラクターとしてはツンデレの役回りなんだけど、これが非常に良かった。
千眼美子さんの声の演技が、本業の声優かと思うほど上手い!
ザムザに限らず、皆熱演されている。

そう、演技もそうなのだが、全体的なクオリティは素人目に見ても結構高いのだ。

アニメーションはちゃんと動くし、見ていて気持ちのいい映像になっていることからも、ふんだんに予算がかけられていることが分かる。

CGも実写に近いレベルで、逆に浮いてる感すらあるクオリティ。

映像表現としても、タイムスリップのシーンで輪っかで時間軸を表現しているのも斬新で見応えがあった。

物語に関しては私は結構音痴なので良し悪しが分かりかねるのですが、飽きずに最後まで見られたので、一定の水準以上のものなのではないでしょうか。

つまり、作品としては手抜きじゃないし、普通に面白く見られる。

この作品の見どころは、豪華絢爛さとスペクタクルだと思います。

しっかりお金をかけることによる作品のクオリティや描かれる世界観の豪華さ、そして壮大なスケールの戦いや物語のスペクタクル。

で、これって何か見覚えあると思ったのですが、日本でも大ヒットしたインド映画『バーフバリ』や往年の名作『ベン・ハー』も同じ構造だと思いました。

娯楽作としてのクオリティの高さに、予算をかけているが故の映像の豪華さ、そして描かれる世界の豪華さ。

物語や戦いもスペクタクル満載で作品の見どころになっているところも一緒です。

そしてどちらも日本人には馴染みの薄い宗教的思想が、作品の大きな部分を占めている。

しかしそれはあまりにあからさまなので、逆に引いた視線で見られる。

これらの部分の共通点が挙げられるのではないだろうか。

逆に、こういう「信仰大河スペクタクル」みたいな作品フォーマットがあって、これを上手く使った例なのではないかと思った。

とまあ様々長々と書いたが、上記とは別に個人的に思ったことを一つ。

やっぱりプロパガンダ的意味合いが強いし、やはりこの作品を好んで見に行こうとは思えない。

しかし、だからと言ってこの作品は嫌いになれない。

それは、シリーズ一作目としてではなく一つの作品として、充分楽しめたからである。

私はアニメーション作品を熱心に見ているわけではないので語れるような知識も資格もないのだが、工業製品の如く生産されるアニメおよびハリウッド映画にはちょっぴりうんざりしている。

昨今の三部作ありきの一作で、それ単体で充分楽しめる作品がいくつあるだろう。

心を打つものはほとんどない。

で、この作品は前後編の前編。

しかし、明らかに詰め込みすぎである。

タイムスリップして、アバター的なものもやって、バトルしまくって、強烈なツンデレキャラ萌えがあって、ラストはなんと30分たっぷり説法が聞ける。

これ以上、何をやるのか。

普通だったらもっと要素を絞って、薄めて、前後編にするだろう。

その愚直さが、好きだ。

そしてこれは何とも形容できないのだが、今時ない「純粋さ」みたいなものが作品の所々に漂っているのも、昔のアニメのようで嫌いになれない。

工業製品のように量産された血の通っていない作品の山の中で、作品としての魅力や話題性(意地悪な見方ですが)の両方において、見る価値のある作品だと思います。

じゃあ積極的に見るかと言うと・・・。