全盛期の東映映画の復活!といった触れ込みが多いけど、いやいや全盛期より綺麗なカラー映像で特殊メイクや音響も進化した分、暴力のエグみは圧倒的に増してるよ…という嬉しい悲鳴。
正直、必要に迫られない無益で衝動的な暴力ムーブそのものにノれなくなってきてる自分がいるけれど、やはり拳や武器が人体を打撃した瞬間にそれは「自分ごと」になる。この世に必ず存在する暴力、その構造を時に感情的に、時に冷酷に見せつけられ続ける。
鈴木亮平はモンスターになってしまった。もう俳優ではない。和製ヒース・レジャーだ。このまま健康に老いてほしいとしか思わない。目の前の人間の感情では微動だにしない殺意。漫画でしか見たことない。
松坂桃李はキャリア初期から背負い続けてきた「悩める青年」象から卒業し、真芯の通ったゴツい名優になった。奇しくも役所広司が若い頃よく演じていた刑事のような真面目な狂気。
MVPは滝藤賢一ではないか。彼が出ると映画全体を支配する過剰な鈍鬱感に風穴が空く。「は!?」とか「おい!」という一瞬で最高点を劈く独特の発声。その怒号でキャラクターたちも観客もハッと我に還る。暴力の虚しさをわかった上で、唯一暴力を舐めている狂った死神的存在。目ん玉だけこっちを覗いて目力だけで恫喝するカットはほとんど水木しげる漫画か諫山創漫画。
村上虹郎は『るろうに剣心』の沖田総司役と合わせて年間最優秀助演男優賞。迷い、暴力に逃げ込む羊的な若者。脆さを湛えた涙目とハスキーボイスを十八番にして二十代は性格俳優の道をまっしぐらに走りきってほしい。
敢えて苦言を呈すなら西野七瀬はミスキャストと言わざるを得ない。本人も周りも決して得をしない役回りかと。世界観に合った(前作の真木よう子のような)ドスの効いた低音の発生ができないなら、無理にでも声を別撮りにして、1人だけピンマイクのように集音してでもトーンを合わせなければいけない。斎藤工が助けに来る前のクラブは、あの幼い存在感と高い声と舌足らずな滑舌では持つわけがない。
その点、声をワントーン高めて雑魚演技に徹した吉田鋼太郎は流石。
眼球への攻撃に拘る全編、ラストに撃ち抜かれるキャラクターの眼球が吹っ飛び、撃ち抜いたキャラクターの同じ左目も直前の殴り合いで潰れている。