caramel

ビューティフル・ボーイのcaramelのネタバレレビュー・内容・結末

ビューティフル・ボーイ(2018年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

文化的に豊かな家に生まれながらも、
両親の離婚、小さな弟妹たちの面倒を見る中で迎えた思春期の孤独(具体的にそこに問題があった、とは描かれませんが&それだけが原因ではもちろんないのですが自分だけ母親が違う、というのは、言い難い疎外感があるのではと察します)..

苛立ちや不安の行き場、ぶつける先を見つけられず、ドラッグに堕ちていく主人公のニック。

義母(ステップマザー)のカレンが優しく、またとても強い人で、皮肉にもそれが彼を苦しめたのだろうと思いました。
だからこその、実母の元で過ごしたときの安定と、父と義母たちの待つ家での再発を描いたのかと。
はっきりとは言っていませんが、実母は仕事人間という感じで、義母とは(どちらが良いということでなく)タイプの違う人である描き方をされているのも印象的でした。

終盤、カレンが、逃走するニックとローレン(ニックがドラッグを通じて交際する少女)をひとり車で追い詰めていくシーンはスリリングかつ、彼女なりの愛情と覚悟、そしてどんなに尽くしても埋めがたい溝を表していたように思います。

が、しかし、、
ティモシー・シャラメがあまりに美しいため、見ようによってはドラッグの危険性や恐ろしさが伝わりにくいのかもしれないと感じます。

見終わったあとはなんとなくもやっとしただけだったのですが、いくつか感想などを読み、とくに北村紗衣さんの感想を読んで、たしかにニックとローレンが快楽に溺れるシーンは、あんなにシャラメを魅力的に撮る必要があっただろうか..と思ってしまいました。
一方、ドラッグの快楽は、経験のない鑑賞者には分かり得ないので、ニックたちがなぜ溺れていったのか、や中毒性のようなものを、多少わかりやすく描いたという可能性はありそうです。
その場合、それをする必要があったのかについては今作では微妙だし、
あのシーンが地味な展開を見せる映画の中でひとつの「華」になってしまった構成、演出には疑問もありますね。

音楽も好きな私にとっては見応えのある作品でしたが、上記の理由から、おススメはあらゆる意味でしにくい作品かもしれません。
ただ、作品を観てもなお、あたまごなしにドラッグはダメいうだけの感想にはなにを観てたんですか?と問いたい気持ちになります。心の闇をすくわれて、堕ちてしまった人が社会復帰することの難しさと(これだけの理解ある家族がいてもこれほどに困難なのだから)周囲と社会の理解について問いを投げかける映画だからです。
その意味で、ニックがどう立ち直ったかを明言せず(原因は各個人の心にあるので、どう治っていくかも人それぞれなのでしょう)
いまも苦しむ人がいる、と結んだラストは誠実だったと思います。
ブコウスキーの詩は、少し美しすぎたかもしれませんが..
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