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ビューティフル・ボーイのmaiのレビュー・感想・評価

ビューティフル・ボーイ(2018年製作の映画)
3.5
ティモシー・シャラメが薬物依存の息子役を演じる…その前情報だけで観に行きました。泣きはしなかったけれど、大きな救いがあるわけでもなくっていうのが凄くリアルで、薬物依存について考えさせられる映画でした。

無償の愛はあっても、無限の愛ってないんだろうなぁと思いました。
父親は父子の関係性がクリーンで良好だった頃のことを夢見て、息子に接するし、その状態に戻るために何度も彼のことを説得し、理解しようとします。息子を理解するために、薬も試しにやってみたり…。
その姿を息子も観れれば…と思うのですが、彼にとっては父親の言動は図星でもあり、自分の自立の出来なさを突きつけられるものであり…要するに受け入れることは、自分がまだ非力な子供であることを再確認させられるわけなので、「僕を管理しようとするな」と喧嘩してしまうわけです。
ずっとその押し問答が続き、実の母親も息子の更生を諦めたくないけど自分だけでは無理というし、再婚相手も力にはなってくれますが、今の家族を大事にしてとやや諦めモードです…そんな雰囲気の押されて、彼がやっと父親に素直に助けを求められるようになった頃には、父親の方は息子の更生に疲れ切っているんです。
結局、2人が歩み寄れたのは、彼が病院に運び込まれてからでした。
どこまでもリアル性に富んだ話なので、更生しようとしては薬物に手を出してしまい、家族との関係性も大学という場の人間関係も破綻していく様は結構しんどいものがありました。ですが、最後には父と息子が歩み寄れて、さらにはテロップで息子が完全に更生できていることを告げるものが流れて…ひとえに良かったなぁと思いました。

グッとくるシーンがいくつかあったのですが、それが結構散り散りで映画全体に散りばめられているので、胸がキュッとなりはしても、泣くまではいかなかったです。
でも、父と息子役の2人のもどかしいくらいのすれ違いは胸を掴まれるようでしたし、それを取り巻く大人も子供もみんな演技が上手でした。
特に、シャラメの幼少期を演じた男の子たちは本当に風貌から言動から凄く似ていて、シャラメが幼い頃からこの映画を撮り続けていたのではないか…と疑いたくなるくらいでした。彼らもこれからどんどん話題になっていくのだろうなぁと思います。

全体的に暗い話ですが、舞台や言葉はすごく綺麗で…だからこそ、彼の蟻地獄のような薬物依存が際立ちます。
号泣はしないけれど、胸に重くのしかかる映画です。
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