しゅんまつもと

愛がなんだのしゅんまつもとのレビュー・感想・評価

愛がなんだ(2018年製作の映画)
4.6
理屈や言葉じゃ表せないけど、自分はこういう映画に出会うために映画を見続けるんだろうなぁと思わされた。

引き合うように、ときに反発するように人の内面は近づき離れる。テルちゃんもマモちゃんも葉子ちゃんも仲原もすみれさんも少しずつ別の人で、すこしずつ同じ部分があって、それが少しだけ重なったり離れたりする。そのなかにたまに見ている自分が加わったりする。この気持ち知ってる。と。

「愛」という言葉はとてもいい加減で暴力的だと思う。だってその入れ物のなかには「好き」という感情もあればその逆の感情が入ってしまうこともある。
コンビニの前でテルちゃんと仲原が話すシーンでテルちゃんが言う「愛がなんだってんだ」っていうのは「(世間一般が言う)愛がなんだってんだ!そんなの知ったこっちゃない!」ってことだと自分は思った。そんな関係やめときな、と誰かは言うだろう。きっと報われることはないのかもしれない。だからって好きは止められない。

そんなふうに捻れた「愛」と呼ばれるそれを信じていかなきゃ僕らは生きていけないんだと思う。
自分はこの物語の結末をちっとも後ろ向きだなんて思わなかった。
原作は読んでないけれど、間違いなく今泉監督にしか撮れない「好きってなんだろう」を究極に煮詰めた映画だった。

土鍋のうどんとアルミホイルのうどん
カップラーメンと中華料理屋のラーメン
1Rのお風呂と銭湯
金麦ロング缶と赤ワイン
いくつもの対比で浮かび上がらせる心情の変化やショットの強度もさることながら、今回は会話劇としての台詞や間が最高だった。

以下ポイントまとめ
・夜の帰り道と金麦ロング缶
・揚げなすと焼きなす
・焼酎ボトル
・大晦日の餃子
・テーブルについたシミ
・力加減どうですかー?とても良いです。良いですか。
・公園で煙草を吸う岡野
・なんでいまさらたってんのよ
・わたし、パスタつくる!
・Homecomingsによるエンディング「Cakes」のリリック"こうならないように歩いてきたのだ"