月

愛がなんだの月のレビュー・感想・評価

愛がなんだ(2018年製作の映画)
4.9
当時の自分がスクリーンに登場していた。

「多分これは恋ではないし、愛でもない。でもそんなことはどうでもよくて、ただ会えれば、それでいい」という主人公テルコの言葉に共感しつつも、いざそこに愛が無いのだと証明されてしまった時の絶望を味わっているため、彼女の本心と身を案じてしまいました。
実際、登場人物たちは皆理想とする愛を十分に享受できず、抱える問題の何一つとして解決されずに終幕してしまいます。しかしながら、観終わった後の私は、何故か、清々しい気分に包まれていたのです。

“愛ってなんだ?”ではなく、「愛がなんだ」。

この映画を観るまで私は、どこか愛に普遍性のような“正解”を求めていました。
けれど、そもそも愛とは極めて個別的で、世間の“正解”へと合わせる必要などなかったのです。
自分が抱いた気持ちが愛であろうとなかろうと、関係ない。

愛がなんだ。

と、この映画は私に前を向かせてくれただけでなく、私の人生観をも変えてしまったのです。

が、しかし、周りに感想を求めると、全く共感できなかったという声もちらほらとありました。
興味深いことに、そうした感想を抱いた人は皆、大きな失恋経験がなかったのです。
このように、鑑賞者の背景によって捉え方が多様になるという点も、映画の魅力であるように感じます。
自分ももし一年前にこの映画を観ていたら、ここまでの魅力を見出せなかったのかもしれないと考えると、もはや失恋してよかった、とまで思えてしまう。
「愛がなんだ」は、そんな厄介で、大切な作品です。
月