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銃のmaiのレビュー・感想・評価

(2018年製作の映画)
3.0
話自体は難しくはなく、銃を手に入れたことから自分の狂気に徐々に侵食されていく主人公を描いたものです。

最初に拳銃を手に取ったのは興味本位だったからか、冒頭で銃を手にする主人公はどこかテキトーな感じで、「え?村上虹郎って演技下手だったっけ…?」と思うくらいだったんですが、だんだんとその魅力(というかは、銃によってどんどんと狂気じみた部分が目覚めていく感じ)に吸い込まれていく様が本当に徐々に徐々に…という感じで、うまいなぁと思いました。
ただ映像はチープな感じが否めない…彼にとっては「生きる意味もないようなものに過ぎない現実」、それをモノクロで表していて、その色のない世界が銃を実際に人に使うことで色づきます。たったワンシーンなら多少は効果的なのですが、そういう映画の主題に触れるような重要な場面で色の変化が現れる….なんて使い古された演出すぎて、わたし的にはうーんという感じでした。モノクロも、昔のフィルム?みたいな感じだったら雰囲気もいいんでしょうけれど、あまりにも画質が綺麗すぎるせいで(デジタル?なので仕方ないけれど)「狙った」感が強く出てしまい、逆効果な気がします。
全体的に「狙った」と分かるような演出が多くて、もう少し自然に・効果的に使ってほしいなと思いました。

彼がどんな風に狂気を帯びるのかがテーマだけに、刑事の出現も持論もやっぱり突飛ですよね。笑
無理矢理に起承転結の「転」を作ってる感じです。
あと出てくる登場人物すべてが「まさにそれ」ってくらい典型的なキャラパターンで、もう少し自然な感じにできないのかなぁとかも思いました。
広瀬アリスの役なんかは、村上虹郎にとって救いの手を差し伸べる天使にしよう!ってコンセプトだと思うんですけど、彼女の「彼に響くであろう」言葉が的を得てないせいで、勘違い女みたいなのに成り下がっちゃってるのはもったいないですよね。
最後の方のシーンの「もう少し待って」みたいなセリフも、必要だったの?ってなってしまいました。いや、多分演出的にめちゃくちゃ大事な部分って位置付けなのだろうというのは分かるのですが…。
彼女の役というのは、本当なら、彼が日常の対岸に行ってしまいそうになるのを食い止める最後の砦のはずなのに。
これは広瀬アリスの演技力云々ではなく、脚本の力不足だと思います。もっと、彼女を活かせるはずです。

村上虹郎の語りは多いのですが、原作小説の性質上仕方ないですし、わたしはあまり気にならなかったです。これはモノローグ以外に表現方法がないような気がします。

なんていうんでしょうか…原作がかなり独特な雰囲気とストーリー展開を持っているせいで、それに寄せてしまうと映画としての魅力が薄まり、それを離れてしまうと逆に作品としての魅力が薄まり…という、実写化自体がそもそも難しい題材なのを痛感しました。原作の雰囲気を醸し出すための白黒は失敗していると思うし、小説だから許せたストーリーの突発性(刑事の無理やりの登場・広瀬アリス演じる女性)も映画となると急に違和感を感じます。
試みは素晴らしいし、役者も揃っていると思うけれど、映画としての魅力はかなり薄いです…。

村上虹郎くんがどんどん狂気を帯びていく様が本当にすごくて、その演技だけでも鑑賞の大きな理由になり得るくらいです。
あと、リリーフランキーのあの胡散臭い感じの刑事役も良かったです。
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