Yoshishun

ランボー ラスト・ブラッドのYoshishunのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

"スタローン主演で1番有名な作品といえば?"

多くの映画ファンは、ボクシング映画の名作『ロッキー』、そしてベトナム帰還兵の孤独な闘いを描いた『ランボー』のどちらかを答えると思います。『ロッキー』でさえも、ファイナルを謡いながらもアポロの息子との共演を果たした『クリード』でカムバック。そしてスタローンの代表作の1つである『ランボー』も、約10年ぶりに戻ってきた。

前作『最後の戦場』での死闘を終え、愛する家族との平和な暮らしをしていたランボー。友人の娘ガブリエラを生き甲斐に余生を全うしようとしていたが、ある日メキシコにいる父親に会いに行ったまま行方不明となる。ガブリエラを探しにメキシコへと向かったランボーだったが、大勢の敵を前に深手を負わされてしまう。さらに追い討ちをかけるかのような彼にとって最大の不幸が訪れてしまい、とうとうしばらく抑えていた感情が爆発する。

本国ではラジー2冠を達成、原作者から貶されるほどの酷評を受けた作品ですが、確かにランボーとして捉えるのなら批判されても仕方ない作品ともいえてしまいます。というのも、本作は過去作のどれよりも最もパーソナルな内容で、規模も小さい。おまけに戦争アクションとしての娯楽性はほとんどない。

そんなランボーらしからぬ『ランボー』ですが、常に現代社会に蔓延る暴力性を切り取ってきたシリーズだからこそ描けた完結編ともいえます。

まず、今回の敵はメキシコ麻薬組織。銃火器から売春行為まであらゆる犯罪に手にかける極悪集団ですが、前作までの戦場とは違った意味で、容赦ない現実を叩きつけてきます。売春なんて当たり前、警察でさえも手玉に取ってしまう組織というのも実はメキシコには実在しているようで、メキシコにおける本作の扱いはかなり慎重なものになっているらしいです。それくらいリアルな闇社会を切り取っているのだから、小規模だとか、敵が弱いとかはあまり考えないほうがいいです。

そんな戦場の敵兵よりもタチが悪そうな組織により、ランボーはかつての暴力性を取り戻してしまいます。映画の冒頭でも、平和に暮らしていながらも人目のつかない塹壕のなかで一夜を過ごしたり、ガブリエラに対して「感情に蓋をしているだけ」と言い放ったり、PTSDに未だに悩まされ続けている。かつて自身にとって縄張りのような場所だった森林で人命救助を行うほどなのに、根本的な部分は何も変わっていない。一作目のランボーのように、彼のなかでは40年以上経った今でも「何も終わっちゃいない」のです。

常に死と隣り合わせの戦場を駆け抜けた哀しき男が笑顔を見せる瞬間、叔母と娘の口論中に子犬のごとく目を泳がせる瞬間、娘に必死に声をかけ続ける瞬間の先に、ちょっと不器用な、でも優しいおじさんがブギーマンのような殺人マシーンと成り果てるのがやるせない。平穏と幸せを取り戻しても、彼が本当に戻るべき場所は戦場だった。

ランボー史上最もバイオレントなクライマックス30分はまさにマイケルも真っ青な地獄のホーム・アローン。暗闇かつ高速なのである程度配慮されているが、R指定も納得の大殺戮。トラップ準備シーンでは不覚にも笑ってしまったのに、いざクライマックスに突入すると全く笑えない。こんなに爽快感のないアクションも久々だった。復讐の果てにある虚無感は一作目に匹敵する。

勿論、この手のアクション映画には突っ込みどころもある。そもそもガブリエラがメキシコへと向かわなければ悲劇は起こり得なかったはずだし、何より彼女の身勝手さが少し鼻についた。また、アメリカとメキシコとの国境というか両国の距離感がおかしなことになっている。また、これは深く言及してはいけないかもしれないが、ランボーがクライマックスで扱ったマグネシウム入り弾薬だが、あんなに大量に入れたら発砲直後に暴発するのでは?と思わなくもなかったり。

スタローンの代名詞でもある人気シリーズは、『FIRST BLOOD』と対をなす『LAST BLOOD』という副題をもって完結した。色々言いたいことはあれど、一人の戦士の激しくも哀しい最後の闘いを大いに堪能できた。しばらく彼ともお別れと思うと寂しくなる…………といいつつ、『クリード』のようにまたしれっと再開するのを心待つ。
Yoshishun

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