鮭茶漬さん

ランボー ラスト・ブラッドの鮭茶漬さんのレビュー・感想・評価

1.0
この映画を観ながら改めて感じた。シルベスター・スタローンという俳優の存在意義、ランボーが世界的英雄のアイコンとなった由縁を。言ってみれば、ベトナム戦争後の萎えたアメリカ人を鼓舞するための白人向けコンテンツがランボーであり(ロッキーにも同じことが言える)、その象徴がスタローンという俳優であるということだ。それだけの存在でトップ・スターとして君臨し続けたのだから凄いと言ったら凄いのだが、その演技力が向上することもなく、人望も薄いのか、素人同然の無名な俳優ばかりが出演し、映画としては地味である。

それどころか、この最終回の悲惨さを観れば、如何にやっつけで制作したのかが分かるというか、執拗なグロテスク描写が際立つだけで空回りしてて見るも無惨だ。暴力の果てに、年老いたかつての英雄を描くのに、哀愁もへったくれもなく、ただモンスターとして描いたことは残念極まりない。映画史に名を残すはずの英雄に泥を塗って終わらせた感じだ。

米国内では、もう20年弱、戦争帰りでADHDに悩まされる元軍人が後を絶たず、社会問題化している。同じ心境のはずのランボーは、それでも何も憂えない、人間的心情の変化は起きない。映画としても薄情である。スタローンにそれを演じるスキルが無いからだろうが、しかし、ロッキーの新シリーズ『クリード』では確かに時が経った英雄の老衰した姿があった。それは良い意味でも悪い意味でも老いて、次の時代に何かを繋げようとするキャラクター像だった。だから、あの続編は成功したのだ。スタローンも人間味があった。これは、もう監督の采配やシナリオからして三流だったとしかいいようがない。ランボーだけに乱暴な……やっぱ辞めた、散々、映画を酷評して、つまらない冗談言ってる場合じゃない。

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