わきお

人生に乾杯!のわきおのレビュー・感想・評価

人生に乾杯!(2007年製作の映画)
3.8
チャーミングなボニー&クライド

1950年代後半、社会主義時代のハンガリーで共産党員のエミル(エミル・ケレシュ)と伯爵令嬢のヘディ(テリ・フェルディ)は運命的な出会いの末に結婚する。
時は進んで現在、二人の老夫婦は僅かな年金を頼りに貧しい生活を送っており、ついには、借金のカタに二人の思いでの品であるヘディのイヤリングを失ってしまう。自身の不甲斐なさと高齢者に対して冷遇的である社会に怒りを覚えたエミルは愛車を駆って郵便局に強盗を仕掛けるのであった…。
というお話。

日本でも高齢者の貧困化が問題視されて久しいですが、遠い東欧の地でも同様の問題を抱えているようです。

強盗なのに非常に紳士的に振る舞うエミルの姿は微笑ましくも、良識のある人を犯罪に走らせてしまった悲哀も存在します。
また、困窮した生活が夫婦生活にも悪影響を与えていた中で、強盗を繰り返し金銭の不安が無くなるにつれ、かつての情熱的な夫婦愛が戻る様はチャーミングであるが、その反面で「金」がいかに生活を左右しているかが分かり一抹の虚しさも感じます。

根本のテーマは重めですが、素敵な夫婦の逃避行や彼らに影響を受けはじめる人々の群像模様なども折り重なり、ハートウォーミングな仕上がりになっています。

捜査の手が及びはじめる終盤はハラハラ。
社会問題に考えさせられつつ、しっかり楽しめる佳作です。

東欧に行ってみたくなるね。
わきお

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