耳だけのダイ・ハード。
音を頼りに、いったい何が起きているのかを想像していく物語。感情のジェットコースターに飲み込まれた。
基本的におっさんのアップだけなのにメチャクチャ面白い。あらゆる感情が刺激され、主人公と共にこちらの神経が研ぎ澄まされていく。
主人公が味わう感情の全てが流れ込んでくるようだ。
焦燥、義憤、嫌悪、後悔、憐憫、共感。
無言で無音な時ほど伝わってくるダイナミックな感情。
大方予想の範囲内の展開なのだが、役者の真摯な演技のおかげでハラハラドキドキが止まらない。
観ていくと、誰が罪人なのか、罪とはいったい何なのか、考えさせられる物語へと変化していく。こちらの思い込み自体が罪の一つだとも思わせてくる。
やがて、そこには映っていない映像が浮かび、無音の中には音楽が聞こえ始める。
そして本当に聞いていた音は自分の心の音だと悟る。全ては我々の心の中に流れる感情の音だと言うニクい演出だった。
欲を言うなら主人公の背負っていた罪が、観客が最初に思い込んでいたことと重なり、思い込みという罪を重ね合わせたような展開ならば超傑作になったであろうと思う。
それでも、エンターテイメントとして一級品の映画でした。