しゆ

白雪姫の赤い靴と7人のこびとのしゆのレビュー・感想・評価

4.5
さすがは韓国映画……映画としてのクオリティが当然のように高く、かつここまで真正面からルッキズムを取り上げた作品は、実写を含めても過去にはあまり見当たらないのではないかと。

「魔女のような見た目のお姫さま」を間違って退治してしまったことから、醜いドワーフに姿を変えられてしまった7人の王子さまたちが(冒頭からかなりひどいルッキズム)、「世界で1番美しい姫君」のキスをもらうことで“呪い”を解こうとするなかで、ぽっちゃり系お姫さまのスノーホワイトに出会う。

ルッキズムを扱っていると言われる童話はそれこそ『美女と野獣』のような古典から存在するけれど、「人は見た目じゃない」という話のはずなのにベルは初めから最後まで美人だし、王子がイケメンに戻るのが“ハッピーエンド”ってどうなの?と批判されてきた。

それは欺瞞だろ、とギレルモ・デルトロがつくったのが『シェイプ・オブ・ウォーター』だったけど、「結局“異形”の存在を受け入れる役割は女性に偏っているじゃないか」という批判や、「半魚人の側にほんとうに愛情を結ぶ意思があったのかいまひとつ分からなかった」という疑問もみられた。

そんななか『白雪姫の赤い靴と7人のこびと』は、「内面化したルッキズムという“呪い”を男性の側が解く」ということ、「外見という“ハリボテ”を越えて人間性を見られるようになる」までのプロセスを非常に丁寧に描いており、加えて映画的な構成も秀逸で、テーマ的にもエンタメ的にもとてもよくまとまっていた。

強いて言うならば、女性と女性の関係性がもうすこし描かれていたらよかったのかな?という思いがあり……スノーホワイト(=レッドシューズ)は最初からルッキズムからは自由な女性だったし、また外見を磨くことへの執着から女が女を踏みつけるという絵面がやや「女の敵は女」に見えたようにも思えたので。

韓国では日本よりも、「整形してでも外見を整えること」へのプレッシャーが強いと聞いたことがあるけど(もし間違ってたらすみません)、韓国女性からみてどんな風に受け取られているんだろうというのも気になる。

ただ↑のような点を差し引いても、色々な角度から満足度の高い1作です。
しゆ

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