Kachi

ロケットマンのKachiのレビュー・感想・評価

ロケットマン(2019年製作の映画)
4.3
【ああ、だからYour SongでなくRocketmanだったのか】

Elton Johnは洋楽を聴き始めてすぐに好きになったアーティストの一人だった。名曲Your Songのあの飾らない感じの語り口が、妙に耳から離れず何度も聴いていた。あの歌の印象が余りに強かったから、Elton Johnの人生は愛に溢れているのだと思っていた。

本作はそのような印象を彼に持っている人に、全く違った物語を提示する。そう、彼の人生は愛に溢れていたのではなく、愛を求めていくども遠回りをした人生だったのだ。

彼の半生は、地球から遥か彼方の宇宙へとテイクオフするロケットの如く、徐々に色んなものを切り落としながら孤独を深めていく。彼自身の曲であるRocket Manは、そんな宇宙の孤独に自分の孤独を重ね合わせて、素直な感情の吐露をしているのだ。

「リリーのすべて」や「イミテーションゲーム」、そしてあの「ボヘミアン・ラプソディ」と同じ主題を扱いつつも、この映画はそこに今までの作品にはない、再生の物語を加えている(実際、彼の人生がそうだったのだけれども)

彼が施設で、幼少期の自分をハグするシーンがまさにそれだ。あのシーンは、彼が自分のすべてを赦し、受け入れて立ち上がることをまさに象徴している。そして、親友バーニーの言葉に素直に耳を傾けて、無事に自分の心に巣食う孤独感に打ち勝ち、無事に愛の溢れる地上へと「帰還」できたのだ。

だからこそ、タイトルはYour Songではなく、Rocket Manだったのだ。
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