三樹夫

ロケットマンの三樹夫のレビュー・感想・評価

ロケットマン(2019年製作の映画)
3.9
ものすごい苦しんでいるのに、誰にも理解してもらえない。しかもわかりやすいぐらいに、自分は苦しんでいるというのを歌にしているのに分かってもらえない。むしろ、悩みごとなんか一つもない人間に思われる。拍車をかけるように、親から楽して金稼いでだの、近所のババアにはあんなにシャイだった子がだの言われる始末。どれだけ苦しんでいると思っているのかと、もはやナルシズム的領域にまで達しそうな、苦しんでいることを分かってもらえない苦しみ抱えた人たちの共感を呼ぶつくりになっている。そしてそういう人は結構多いのだろうと予想する。
エルトン・ジョンが何の悩みもないと人から思われる要因の一つは、奇抜なステージ衣装にあるのだろう。しかし、映画を見ているうちに、心ボロボロの状態でエリマキトカゲみたいな恰好をしてステージに上がるエルトン・ジョンに悲しさを抱くようになる。

エルトン・ジョンの結婚相手(女)が象徴的で、やっと僕の苦しんでいるメッセージを受け取ってくれる人がいたというので結婚するが、結婚相手としてはうまくいかないのが悲しい。
また冒頭のけばけばしいステージ衣装のままのエルトン・ジョンがグループカウンセリングに参加して、最初は作り上げたエルトン・ジョン像を演じるが、徐々に素の自分を出していき、最後にはジャージ姿になるというのも象徴的だ。ステージ衣装からジャージに変化することによって、作り上げたエルトン・ジョンから素のエルトン・ジョンへの変化が、衣装によって表現されている。
三樹夫

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