平田一

デュエリスト/決闘者の平田一のレビュー・感想・評価

デュエリスト/決闘者(1977年製作の映画)
4.6
些細な諍いから始まった二人の男の“決闘”が次第にどんどんエスカレートしていく様が怖くって、史劇というよりサイコロジック・スリラーに近いかも。ハーヴェイ・カイテルが演じているフェローの病的な執念は今で言う“マッチョイズム”というにはあまりにおぞましく、何というか自己顕示で作った藁の鎧みたい…そう見ると空虚な自分を認めたくないように見え、だからああいう顛末なんだと思うと結構符に落ちる。

かといってデュベールが理知的かって言われると、彼もフェロー程ではなくとも、藁の鎧をまとっている。難癖を一蹴したり、決闘を歯牙にもかけず、やり過ごすことが出来ず、結果術中にハマる(当時の時代背景的にムリなのは伝わります)。そこがこのキャラクターの掘り下げがいのあるところ、追いかける面白さがあるってボクには感じられ、しかも映画が双方に中立なのも良かったです。

真の意味で“負かす”ということを冷徹に突き詰めるリドリー・スコット監督の長編初監督作。新作たる『ナポレオン』に備えて昨日買ってみて、そしたらまさかのナポレオンの時代が舞台であったこと、難解なところも含め非常に魅力的なとこ。この頃から語り口を備えていたのもビックリですし、しかもこれ少ない予算で制作していたらしいです。

これも好きな『トリスタンとイゾルデ』(リドリー・スコット製作総指揮、ケヴィン・レイノルズ監督)のパンフによると、当初リドリー・スコットは「火薬陰謀事件」のガイ・フォークスを題材にした作品を作ろうとしていたとありました。でも資金が集まらなくて、その結果少ない予算で作れる『デュエリスト-決闘者-』に至ったって書いてあってのを観終わって思い出し、尚更監督の発想の柔軟性は勿論ですが、この映画を観追えたあとの余韻も込みで最高です。

そういえば今年やってた『イニシェリン島の聖霊』も思い出すと主人公やテーマがちょっと似てるかも。機会があったらあの映画も観れる機会を作りたい。
平田一

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