マクガフィン

斬、のマクガフィンのレビュー・感想・評価

斬、(2018年製作の映画)
2.8
250年以上続いた江戸時代末期の揺動する転換期の舞台をメタ的にして、戦後70年以上の現代日本と照らし合わせることに。〈斬る〉ことや〈復讐〉の葛藤を通して、生死の問題に肉薄することで、「非暴力」のテーマを炙り出すことに。

強面の浪人集団を仮想敵と見なすこと、武力行使の自衛権のライン引きの警報は、どれだけ非暴力を貫けるかの問いかけにも。大自然の背景も争いの無常さを際立たせる。

しかし、池松壮亮のやたら飄々とした表情で、心情やメタ的なこと汲み取ってくれと言わんばかりのそぶりは、如何なものか。死への恐れや悶々とした葛藤による自慰行為もぼやけた感じに。

グツグツと煮えたぎるマグマのような熱量の高さを感じる。しかし、大きな問題をミニマムに矮小化して見せられて、想像力を喚起して巨大化して考えくれと言う手法だが、流石にその隔たりは大き過ぎるのでは。演出や構図に問題も多く、作風の背伸び感も大いに感じる。表情のクロースアップや、手振れ映像が多いことや、大仰なBGMの多様は、誤魔化しも含まれているだろう。

死が急速に迫ってくる感じ、深い森の中を彷徨うこと、一度、斬ったら引き返さないことなどの、ハッとさせることもあるのだが、手振れ映像による平衡感覚が弱いので、席を立とうか迷うぐらいに不快で、相性最悪に。

映画を見終えてまず思ったことは、ヴェネチア映画祭コンペに出品されたが、日本独自な自衛権の風刺や暗示を、どれくらい理解したり、賛同する外国人がいたか疑問なことと、如何にも映画評論家が好きな作風で、キネ旬のベスト10には入るんだろうと思った。