回想シーンでご飯3杯いける

さよならくちびるの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

さよならくちびる(2019年製作の映画)
2.0
あいみょんが作った挿入曲を、小松菜奈と門脇麦が演じるインディー・ミュージシャンが歌う。これほどハマる構図はなかなか無いと思えるし、とても期待していたのだが、結果的には予想していた範囲の一番下という感じの作品だった。

何と言っても、インディー・ミュージシャンが主人公の映画なのに、2人の音楽に対する熱意が全く描かれていないのが辛い。2人の不仲がグループの解散に繋がるというストーリーなのだが、この2人、少なくとも作品内では練習もしないし、作曲で悩みもしない。インディー・グループなら音楽を必死でやっているからこそ、ぶつかり合う姿を描いてほしかった。異性関係や生活態度で気拙くなっていく話なら、音楽をダシにするのは止めてほしい。

あいみょんなんて、近年まれに見る「音楽で勝負する」タイプのミュージシャンなのに、こんな作品で音楽を利用されて気の毒だ。

例えばジョン・カーニー監督の「シングストリート」や「はじまりのうた」なんかは、各々、青春ドラマや恋愛ドラマのスタイルを取りながらも、ボブ・ディランやザ・キュアー等の実在する音楽をストーリーに組み込んで、音楽映画としての世界観をしっかり構築しているから深く心に残るのだと思う。本作はそうした根っこの部分が非常に弱い。

僕が挙げた不満点は、本作固有というより、日本の音楽業界そのものの性質でもあるのだろうと思う。ロックやフォークであっても所詮はキャラクターありきのビジネス。音楽はいつも二の次なのだ。

主演の2人に加え、付き人を演じる成田凌のひょひょうとした演技も相変わらず魅力的なだけに、音楽映画としての根本的な部分での不出来が非常に残念に思える。ライヴハウス周辺のやや古臭い描写辺りを見ると、監督の認識がやや古臭いのかもしれない。ラストのオチも軽過ぎる。