もとまち

闇動画12のもとまちのレビュー・感想・評価

闇動画12(2015年製作の映画)
3.7
『いすのおじさん』
これはタイトル勝ち。断続的に響く物音と、現れては消えてしまう謎の椅子。この二つの怪異だけでジリジリと不気味な緊張感を持続させる演出が素晴らしい。骨と髪を繋ぎ合わせたような椅子のデザインは『悪魔のいけにえ』みたいなキモさがある。問題の「いすのおじさん」自体は、あと一歩でギャグになりかねないスレスレの見た目だが、人か魔物か判らない独特の存在感は中々に気味が悪い。最後、投稿者の女性が、「何て書いてあったと思います?......」と芝居がかった口調で聞いてくるのがウザかった。

『黒い人』
精神病患者の顔どアップの自撮りが延々と続くので息苦しかった。目をかっ開き、何度も唾を呑み込みながら、「黒い人」の出会いを語るシーンはけっこう迫力がある。目の前を通り過ぎる「黒い人」の映像はCGのチープさに笑ってしまったが、家に侵入してからは超怖かった。人の形をした、でも確実に人じゃない何かが、ヌッと迫ってくる恐ろしさ。ただ、白い煙が口から抜き取られる所は別に見せなくていいと思う。

『事故物件』
事故物件のタイトルを冠した映画はいくつもあるが、そんなのよりもこのエピソードの方が遥かに怖い。ひとりでに開くドアや不気味な物音など、怪異自体は地味なんだが演出が巧いので鳥肌が立つ。奥の奥に部屋があるような空間の撮り方もホラー的で良い。時間と空間が切り離される絶望的な展開からの、畳み掛けるようなラストのショッカー演出に心臓が跳ね上がる。長いけどよく出来てます。

どの話も劇伴がほとんど無く、白テロップのみで淡々と進む構成。しかも怪異の正体は一切明かされない。単なるびっくり箱的ホラーではなく、尾を引くような気味の悪さがいつまでも残る名モキュメンタリーだった。
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