イチロヲ

怨歌情死考 傷だらけの花弁のイチロヲのレビュー・感想・評価

3.5
封建的な村社会から大都会東京へとドロップアウトしてきた歌手志望の少女(小川節子)が、人間の欲情が幾重にも交錯する、タレント業界の実態を知らされていく。朴訥な少女の上昇と転落をメロドラマ調に描いている、日活ロマンポルノ。

主人公少女とカップリングされる新米イラストレーター(影山英俊)を、麻丘めぐみ「芽生え」の歌詞に登場する「あなた」と重ね合わせる手法が面白い。自身の夢を叶えるために邁進するのだが、ナンダカンダあって不条理な東京砂漠に埋められてしまう。

後半部に入ると、アメリカン・ニューシネマの路線に転調。殺人を犯したときのスプラッター描写にやたらと気合が入っており、現実逃避(=セックス)から全裸逃走劇への畳み掛けに大笑いすることができる。

小川節子の美しいホワイトスキンは言わずもがな。時代劇メインの彼女が、現代劇の中で香気芬芬とさせているところも、大きな醍醐味となっている。
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