シャチ状球体

ジェニーの記憶のシャチ状球体のレビュー・感想・評価

ジェニーの記憶(2018年製作の映画)
4.7
性暴力は強要の形をしていないこともある。むしろ被害者が加害者に感謝してしまうような支配と被支配の関係は、当事者にとって良い思い出として残っているかもしれない。

3人だけの約束(秘密)は内輪の結束を高めるように機能し、加害者は居場所を提供することで被害者が逃げられないように逃げ道を塞ぐ。入り口も出口も開かれているからこそ、成人が未成年に恋愛を要求することが立派な犯罪であると認識する年齢にならないと被害が被害として記憶されない。

ビルがコーチとして教えた学生が皆彼のことを感謝しているのもそういう理由だ。才能を育ててもらった、彼がいたからスポーツ選手になれた、自分が受けたのは性暴力ではなくて愛情だったetc......。

虐待が虐待であると認識できていない。でも、それは確実に将来を悪い方向へと変えてしまう。自分が大切にされるべき存在であると思えなかったり、自分の人生に価値を見出せなかったり。

被害者は時に被害者の見た目をしていない。
この映画によって救われる人は少なからずいると思う。そして、全ての性暴力はいかなる理由や背景があっても容認されるものではなく、必ず加害者には法的な措置が取られるのだと確信できる社会にこれから近づけていかなければならない。絶対に。
シャチ状球体

シャチ状球体