依存は人を蝕む
香取慎吾のクズ男演技が最高に刺激的な本作。監督は白石和彌ということもあり、人間のエゴを最大限リアルに描写。あまりにもリアルすぎたせいなのか、何の意味もなさない、単調な人間観察映画になってしまった印象でした。逆に考えると凄い映画です。
「ギャンブル依存」が中心的なテーマで、その背景として「殺人」がある。ポスターはいかにも殺人をメインとしたサスペンス色が強めですが、あまり期待しないほうがいいかもしれません。「なぜ殺したのか?」の明確な答えが無いので『凶悪』のような白石節炸裂のサスペンスとは程遠い。「誰が殺したのか?」は観ていくと途中で見当がつきます。判明した時は誰しもが「お前しかいないよね」と思ってしまうはず。
ギャンブルの恐ろしさ、3.11、家族問題など、様々なメッセージ性が強い本作ですが、それらを言葉で表情で体現している役者陣が本当に凄い。香取慎吾の演技は孫悟空のイメージしかないので、まさかここまで救いようのないクズを演じれるとは。彼のような人がいそうなのがまた怖い。
白石作品の中では正直微妙な作品ではありましたが、途中で飽きることは一切ない。鑑賞中はのめり込むように観ていました。ネガティヴ寄りで人を引きつけるパワーを持つ作品です。
白石作品常連の音尾琢磨は画面に入るだけで、そのシーンの主役になりますね。好き。
2024.5.20 初鑑賞