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ヒトラーと戦った22日間のsamiamのネタバレレビュー・内容・結末

ヒトラーと戦った22日間(2018年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

思いがけずトークイベント付きの会で観賞。舞台挨拶やトークイベント付きの会での観賞は初めてだったので少し得した気分。

以下ネタバレ含む備忘録。
ソビボル絶滅収容所で実際に起こった集団脱走劇。
捕虜として収容されたユダヤ人ロシア兵サーシャがリーダーとなり綿密な計画を練り脱走を企て実行するまでのストーリー。
黄色い星のワッペンを付けた集団を乗せた列車がソビボルニ到着。労働させるため技術のある者だけを残して男女に別けられて即シャワーと偽ってガス室に送り込まれるところから始まる。そこからいたたまれない内容が最後まで淡々と続く。人はこうまで残虐になれるのかということをよく現したナチス将校の看守の行動。
サーシャと彼を支える女性ルカが交わす会話から、サーシャがミンスクで脱走を試みたが失敗し、残った収容者が虐殺されたことが推測できる。
はじめ他の収容者から脱走計画のリーダーになって欲しいと誘われるもミンスクの後悔からか頑なに拒む。彼を支える女性のルカからも、ユダヤ民族が古代エジプト寄留時代にリーダーになることを拒み続けたが最後は受け容れてエジプト脱出を果たしたモーゼに例えられて、自分に与えられた運命を受け容れなさい、信念を持ちなさいと諭される。
必ずしもその説得に応じたようには見えなかったが、他の収容所からの大量の死体の輸送を見るなどして、サーシャは決意して脱走を計画する。計画に加わり、ナチスの看守達を殺していくメンバー一人一人のひととなりがいくつかのエピソードで紹介される。脱走そのものは多くの犠牲者を出しながらも、成功したように見えたが、字幕が説明する後日談は悲惨な内容。特に市民に通報され殺された者か脱出成功者の半数もいたとは。
しかし、サーシャは生き残り終戦までナチスと闘い80歳まで生きたとあった。
このサーシャという人はこの映画のストーリーからも、カリスマ性があり多くの人を引きつけ従わせることができる魅力的な人だったんだろうなと想像する。

その他のメンバーの一人もブラジルに逃れたナチス将校を十数人も殺害したと伝えられていると字幕で説明されていた。

こういう事があったのだという驚きの史実を知ることが出来たことは良かったが、今まで観たナチス、ユダヤ人虐殺に関する映画の中では、何故か感じるものが少ない映画だった。
冒頭の聖書からの引用、原始キリスト教徒がユダヤ人以外の信者に洗礼を授けることを決心した言葉だが、何故引用されたのか最後まで不明だった。自分は洗礼者ヨハネだと言って、収容者に酒をかけるシーンがあるが、それとの関連は無いように思えた。また、多くの収容者が脱走する際に、撃たれて倒れている看守のトップに脱帽して出て行ったのかが理解できなかった。トークイベントでもそれらについての解き明かしはなかった。

ただ、トークイベントは初めて聞くはなしが多く、勉強不足の私にはとてもためになった。
これまで何本もアウシュビッツやホロコーストに関わる映画を観たのに、「絶滅」収容所という言葉は、今回のトークイベントで初めて知った。ユダヤ人を絶滅させるためにいかに効率良く殺害するかという意図で設計されたという収容所。そのネーミングは狂気としか思えないが。
映画以外にも、デンマークの中学生が侵攻してきたナチスに降伏した大人に反して、組織的に抵抗運動を繰り広げたことが紹介されるなど、とても勉強になった。
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