マクガフィン

マチネの終わりにのマクガフィンのレビュー・感想・評価

マチネの終わりに(2019年製作の映画)
3.7
運命的な出会いとすれ違いにピュアさがある恋愛は、如何にも一昔前の恋愛ドラマ的だが、エレガントなトーンやテイストと、主演2人(福山雅治・石田ゆり子)の佇まいなどの気品さやクラシックギター音楽とのマッチさが良く、匂い立つような構図の美しさに。役者の兼ね合いも良く、何気ない会話のやり取りも、各々のキャラの特徴を捉えており、キャラ紹介や作品のインプリケーションを同時に展開する巧さも。東京・長崎・パリ・NYと舞台は変わるが、もどかしさや何やらの停滞しそうなことを音楽を挟んで飽きさせなく、丁寧に積み重ねることに感心も。原作未読。

テロやコインの扱いや辻褄合わせは、スッキリするまでいかないが、時々刻々と変わる世界情勢も背景に取り入れつつ、「未来によって、過去の想いは変わる」と「一瞬の誤解で長くすれ違うこと」を交錯させ、関連性のパロメーター的な〈水〉を使ったメタ的な描写が冴える。

マネージャー(桜井ユキ)の愛憎交わる狂気的な行動で、長くすれ違う切っ掛けを起こした後の〈譲る精神〉の変遷は、人物(福山)と音楽(の才能)の両面を愛していたことが後に分かる〈罪と愛〉の深さに、何とも言えない感情が込み上げる。運命的な出会いによって音楽に狂いが生じたので、遠ざけるが、わだかまりを解放しなければ、音楽を昇華できないと思う行動のシークエンスが秀逸で、こちらの過去の思いが変わることに。〈思い〉と〈想い〉の繊細な違いや、音楽と情念の組み合わせの絶妙に唸らされる。

様々な情念の開放や再生。ギターの音がハープのような音色に聞こえ、カタルシスによる匂い立つ美しさで、〈水が溜まっていない噴水〉での再開に、何とも言えない感情が込み上げる。