Brynhildr38

アルキメデスの大戦のBrynhildr38のレビュー・感想・評価

アルキメデスの大戦(2019年製作の映画)
3.8
良作。
三田紀房による同名マンガ(連載中)の実写映画化で、戦艦大和建造を巡って天才数学者が海軍に数学で立ち向かう物語。

冒頭の海上戦闘シーンは、なかなか頑張っている。特に墜落するアメリカ軍飛行機からパラシュート脱出した兵士が救出されるシーンで、それを遠目に見る日本兵士の描写が秀逸。そのまま素直に受け取ることはできないが、兵士の犠牲当たり前の日本軍と兵士を人として扱うアメリカ軍の違いが印象深い。

全体の雰囲気は、日曜夜の熱いサラリーマン・ドラマそのもの。
戦争や軍隊を嫌っていた主人公が、自分で戦艦の設計図を復元する過程でどんどん魅かれていって、やがては・・・という流れも説得力がある。ただ、山本五十六が、いくら天才でも一学生に戦艦建造の見積もりを頼むと言うのは、さすがに無理。

キャストで取り上げたいのは2名。
天才数学者・櫂直を演じる菅田将暉の軍服の似合わなさはキャラと合っていて、グイグイと物語を引っ張っていく演技は相変わらず上手い。櫂と対立する海軍の造船中将平山を演じる田中泯は、ダンサーという肩書が嘘でしょとしか思えない重厚な演技を披露する。

ちなみにタイトルですが「アルキメデス」とする必然性とか納得感はどこにも無く、仮に櫂の天才性を示すのであれば「オイラー」の方が適正と思うけど「オイラーの大戦」だと、日本人的には何のこと?となるので、それよりはマシと言うことでしょうか?

ラスト30分からの目まぐるしい展開は見事に仕上がっていると思う。そして、最後の二人の静かな対決がこの作品の山場。その予想を超えた結末で、久しぶりに心地よい満足感に浸れました。
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