ハレルヤ

アルキメデスの大戦のハレルヤのレビュー・感想・評価

アルキメデスの大戦(2019年製作の映画)
3.9
1933年の日本。世界に威厳を見せるために巨大戦艦大和を建造しようとする日本軍。その強行なやり方に危機感を抱いた山本五十六は、天才数学者の櫂直を招き、大和の建造費を割り出して軍の裏側に潜む陰謀を暴こうとするサスペンスドラマ。

「ゴジラ-1.0」でアカデミー視覚効果賞を見事受賞した山崎貴監督。ゴジラの前の作品が本作で、監督の得意技であるVFXの凄みは冒頭から早速如何なく発揮。

戦艦大和が米軍から猛攻撃を受けて沈没していく様子が圧倒的な迫力を持って描かれていて、掴みは完璧レベル。ちょっと大袈裟かもしれませんが「プライベート・ライアン」のような空気を感じました。

そこから時系列は遡り、戦艦大和の建造しようとする動きが始まる。その建造費用の不自然さを感じた山本五十六たちは類まれない数字の才能を持つ櫂直に協力を求め、正しい費用の算出を求めていく。

戦争が背景にありながら戦闘シーンは冒頭のみ。なので戦争の場面が目当てだと厳しいかもしれません。ほぼ大和の建造に関しての会話劇で展開されます。

それでもグイグイ引き込まれる内容でした。櫂直を演じるのは菅田将暉。黒板で数式を用いながら軍の上層部を説得する長めの場面は圧巻。天才数学者の役柄に十分な説得力がありましたね。

結局日本はアメリカとの戦争の道を進み、あれだけ苦労して不正を暴いたにも関わらず、大和は建造されてオープニングでの悲惨な運命に。ラストからオープニングへと繋がる構成も素晴らしかった。

一部の人間の利益の為に国を巻き込み、命を失う人が大勢出る戦争の現実を実感しましたし、時代は変わっても本質的な人間の強欲は変わらない事も改めて思い知らされた気がします。

大半はフィクションですがかなり骨太な作品。時間も忘れて見入っていました。今見るとここから山崎貴監督の次回作「ゴジラ-1.0」へと関連していくのも色々と思うところがありますね。
ハレルヤ

ハレルヤ