カワウソのアイサツ

アルキメデスの大戦のカワウソのアイサツのレビュー・感想・評価

アルキメデスの大戦(2019年製作の映画)
4.5
虚しい、何もかもが虚しい。

私達は史実として戦艦大和の最期を知っている。
悲劇に突き進む一本道に抗う事の尊さを、嘲笑うように凌駕する国策としての戦略。

血税を血税とも考えず、まるでゲームのコインのように使う事に何の疑問も持たない為政者や上層部の人間。
数字化される人間と、踏みにじられる生活や人生。

数学の天才と呼ばれる男と田中泯演じる軍用艦製造の設計と具現化のエキスパート。
この二人が巨大戦艦の模型を前に言葉を交わすシーンは一生記憶から消えないだろう。
『戦艦 大和』……この荘厳な名がこんなに悲しく響いた事はない。

重厚な作りの映画ではないし、むしろライトな語り口の映画だが、観終わった気分はひたすら暗い。

『永遠の0』に続く反戦映画の傑作だ。
山崎貴監督が描き出す日本人には、いつも驚かされる。
共感出来る日本人を描ける稀有な監督さんだ。