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アルキメデスの大戦のZUSHIOのレビュー・感想・評価

アルキメデスの大戦(2019年製作の映画)
4.2
山崎貴監督の作品は、商業主義的であるゆえに観客におもねるような直接的な心情描写が好きではなかったが、この『アルキメデスの大戦』ではそういう表現がないわけではないが、それが気にならないほど、脚本の構造やテーマが良かった。
むろん、完全なフィクションではあるが猪瀬直樹の『昭和16年夏の敗戦』という優れたノンフィクションでも知られたように、当時の日本においても日本が負けることを論理的に証明して見せた事実はあり(そして、それは東条英機の精神主義に一蹴されてしまうのだが…)、決してなかった話というようには思えなかった。
それにしても、このタイミングで鑑賞して改めて日本が昭和戦前から全く進歩していないことをしみじみと感じた。奇しくも、原作者の三田紀房氏も新国立競技場の建築騒動からこの物語を構想したというし、今はまさに「2020東京オリンピック」という「戦艦大和」最優先の戦艦巨砲主義から一歩も進んでいないということだ。
そんなオリンピックの開閉会式のプロデューサーを山崎貴監督が担っているという皮肉に、櫂直とのアレゴリーを感じてしまう。
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