ゆかちん

15年後のラブソングのゆかちんのレビュー・感想・評価

15年後のラブソング(2018年製作の映画)
3.1
フィクションながら夢見過ぎず、無さそうでなんかありそうなラインに抑えてるのが絶妙。
あり得ない〜て思いながらも、そこまでぶっ飛びでもないし、起きてもそこまで違和感ではないってラインといいますか。
そして、ラブコメぽい感じの紹介文を観たけど、下手にハシャがず、割と現実的に進んでいくのは良かった。
ローズ・バーンとイーサン・ホークやし、これくらいの雰囲気がちょうどいい。
んー、しかし、中々複雑な気持ちにも。
でも、人生の転換機を経て、不確かなものしかなくても前向きに一歩進む姿は良かった。

イギリスの港町の風景と、街の人や街並みとかの雰囲気がとても良かった。
もちろん、アニーの最初のナレーションにもあったように、住んでたら田舎の閉鎖感や閉塞感はあるんやろうけど。



アニー(ローズ・バーン)は、イギリスの港町サンドクリフに暮らしている。
恋人のダンカン(クリス・オダウド)とは付き合って15年間同棲しているが、最近は彼に対する小さな不満が募る。
その一つは、90年代に表舞台から忽然と姿を消した伝説のロックシンガー、タッカー・クロウ(イーサン・ホーク)への異常な執着ぶり。
もう一つは、2人の将来のこと。子どもが欲しくなってきたアニーと、自分のことばかりみているダンカン。
ある日、ダンカン宛に送られてきたタッカーのデモ音源について口論になったアニーは、ダンカンが運営するタッカー・クロウのファンサイトにタッカーのアルバムを酷評するコメントを投稿する。
後日、アニーのもとに同意だというメールが届く。その送り主は、タッカー・クロウと名乗ったーー。




ダンカン子どもすぎだろw
最初は15年も続いたし、アニーも好きならうまくいけば良いのにとは思ったけど、途中から、こいつはダメだ(゚ω゚)となりました笑。
私は音楽好きだから、崇拝みたいになる人たちがいるのも、未聴のデモ音源を先に聴かれたら怒るダンカンの気持ちもわからなくは無いけどさ〜。
浮気を認めた後の会話とか、素直すぎるのは良いところなんだけど、なんやねんお前…て気分にもなる笑。
自分のことしか見て無さすぎる。
子どもが欲しい欲しくない以前に、人が生きていく中で必要な、相手のことを想う気持ちがかけてる。。。
ただ、すぐに振り返って反省したりするところからすると、悪意は無いし、完全に自己中では無いようで、良いところもあるのになとは思うのだけど。。。
彼の言動にいちいちオタクの痛いとこや、大人になれない大人の悪いところ出てるなっと思ってたけど、そんな中で彼はとても大切な発言もしていた。
それは、タッカーに言った、
「僕はあのアルバムを何よりも評価する。
完璧だからじゃなく
僕には大切だから。
あなたにはクソでも構わない。
アートは作者のためじゃない。」
という言葉。
…これ、ほんまそうなんす。
作者であるタッカーは嫌な思い出もあり、名作なんて思ってない。
でも、それを評価して自分の人生において大切にする人がいる。
そこは解釈の間違いなんかではない。
アートは発表した瞬間から作者だけのものではなくなる。
てか、私は、受け手がそこになんらかの意味を付けてこそ完成するとも思うんだな。
この大人になれない大人ダンカンをクリス・オダウドがナチュラルに演じていた。
アイルランドの映画で見たことある人だ。
腹立つけど、悪い奴では無いんだよな〜足りなさすぎやねんけど、でもアカンわぁ〜という絶妙のバランスで演じてて良かった。


イーサン・ホークめちゃ良かった!
ムーンナイトで初めてちゃんと観た。
アーサー・ハロウとは違う!笑。
タッカーの役で大事なところ全部演じててよかった〜。
ミュージシャンらしく?女の人にだらしなく大人になれずクズでそのまま歳をとっていて、自分の中で強い後悔と罪を背負って、収入的にも精神的にも落ちぶれてドン底ともいえる。
…てところから、くたびれたオジサンである必要がある。
でも、伝説のミュージシャンだし、数々の女の人にモテてきた経験があることから、それなりの影のある渋さとかっこよさが必要。
…でも、カッコ良すぎてもダメ。イケオジだと、いやいやドン底ちゃうやろ!てなる。
…だからといって、誰も振り返らないくらいどん底哀れさがあってもダメで、クズやけど愛されるとか、どこかチャーミングで魅力があり、キラキラしたところが残ってて、単なる女好きオヤジではいけない。
…という、タッカーが成立する微妙なところを見事に再現。
子供を寝かせてアニーのところにいきかけ、思わず壁に隠れてドキドキを抑えて、アニーの前には余裕のあるカッコいい表情で現れるところが可愛くてよかった。
なんというか、イーサン・ホークだから成立するという感じでした。


タッカーの子どもジャクソン役のアジー・ロバートソンがとんでもなく可愛かった。。
ほんま天使やん…。。。


アニー役のローズ・バーン、めちゃ素敵で可愛い。。好きな女優さんだな。
モヤモヤした女性ながら、ありがちな悲壮感を全面に出すのではなく、気持ちよく良い人な面が出てて良かった。
周りを繋ぐ笑顔と時折見せる切ない表情。
長女の性分なのか、妹をはじめとして周りの面倒見て頑張ってきたんだなぁとか、勇気を出して一歩踏み出すことが出来ずにいたんだなぁとか、お兄ちゃんお姉ちゃん気質あるあるというか、気を遣ってるんだなぁとか、そういうのがヒシヒシと伝わる。
そんな彼女がタッカーとの出逢いで変化していく。


タッカーとアニーがメル友から実際に会って過ごすことで雰囲気がよくなり、このまま2人の道をいくのか?と思いきや、ジャクソンのこともあり、夢は醒める。
や、タッカーはまだ夢をみたいし彼女と繋げたいと思っていたようだけど、アニーは現実を見ればそう浮ついてられない。相手は子どもがいて、子どものためには無茶は出来ない。
アニーはそれを悟り、スッと去って帰りの車で涙を流す。。
えーん、現実〜〜〜!!
でも、そういう区切り方はいいなと思った。
情熱と勢いで走るのとは違うのが大人の感じで。



タッカーと彼の歌に出てくるジュリエットの関係は詳しくは不明で、グレイスが彼の子供のかどうかも実際分からない。
それでも子供を洗面所に置いてきぼりにしてしまったことで、タッカーはトラウマになり、自分を責め続けていた。
その後も、色んな女性とお付き合いやら結婚やらをして子どもを授かるも、グレイスのことがあったせいか、どうやらその後の子どもたちとは幼い頃に相手と別れて、育てていない。
それでも、ジャクソンを育てることで、タッカーはようやく自身にかけた呪いから解放されつつあった。
そんな時に出逢ったアニーの一言で、グレイスと向き合うことが出来た。
彼はミュージシャンのキャリアを失い、20年無駄にしたと言っていたけど、その最後のライブで止めてしまった時計をアニーとの出逢いでようやく進めることができたよう。

アニーも、モヤモヤしつつ現状打破に踏み切れなかったところ、タッカーとの出逢いで自分の道を歩もうと一歩踏み出す。
15年無駄にしたというけど、まあ、楽しいこともあっだと思うし、そこがあったから今があるようにも思うし、遅いからと諦めることはないよ、という感じもした。
アニーが守らなければと思っていた妹も、自分は大丈夫だから姉に自由になってほしかったというのもいいよね。
自由になった彼女は、自分のために歩き出す。
「確かなものはないけど、何が起きても平気」と言える彼女は頼もしくて良かった。
そして、再会するタッカーとアニー。
最後のその表情も印象的。

アニーが自分の幸せを掴むために、変化を恐れずに行動を起こすことの大事さが伝わる終わり方になっていたのが良かった。
そういう意味では、邦題では15年後のラブソングてついてるけど、15年かけて真実の愛を見つけたというよりも、15年かけて自分の生きる道を見つけたというニュアンスの方が遥かにスッとくるし大事だし、メインテーマなんじゃないかなぁと。


再会した2人のその後はどうなったかわからないけど、エンドロールでダンカンがファンサイトに流していた動画を見るとなんとなく。
というのも、内容が25年ぶりにタッカーがだした新作の話で、そのアルバムの曲タイトルがアニーのこと多いんだよね。
そしてダンカンが「噂によると彼はどうやら愛を見つけたようだ。」と。
つまり、2人は一緒に暮らしてるかはわからないけど、交流を続け大切な存在になってるのかなーと。
アニーが自分の子供をもったかはわからないけど、それでも2人で幸せな時間を共有してるならいいかなと。


まあ、あんだけ次々と違う母親の子どもがいるタッカーだから、アニー大丈夫か?とも思うけど笑。
でも、タッカーてすごいよね。そんだけ色々渡り歩いてる?のに、全母たちや子供となんやかやで繋がってるというwクソだと思われてるやろけど、憎めない人なんだろうね。
最初のグレイスは別だけど。

ついに見つけた運命の人ならいいですね。

てか、ダンカンが捨て台詞に「彼にそんなの(愛を見つけた)は似合わない!」て言うてるんやけど、まあ、それもある意味合っていて。
いや、人の人生なんやから幸せなってええやん放っておけよってなもんやけど、悲しいかな、アートって作者が悩んだり不幸だったり絶望してたりすればするほど恐るべき吸引力のある作品が出来たりもするよなぁという面もある。
幸せになってつまらんくなるというのもわからなくは無いw
まあでも、幸せでええやんか!て言いたい方が大きいけどね笑。



ザ・キンクスの「Waterloo Sunset」いいなぁ。
ウォータールーといえば、世界史好きかつピアノ経験者としては「ウォータールーの戦い」やったけど、音楽掘って知ったキンクスのこの曲聴いた後は改めた記憶…笑。
イーサン・ホーク良かった!


人生は全て充実してうまくいくわけではなく、無駄に過ごしたと思うこともある。
それでも人生が続き、前を向いて歩く。
そこに海風が吹き、街の音がする…。
そういう、苦くもあるけど爽やかで柔らかな空気感のある作品でした。
ゆかちん

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