悪魔の毒々クチビル

アサシネーション・ネーションの悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

2.0
町中の住民の個人情報が漏洩しちゃってえらいこっちゃ、なお話。


まぁ結論から言うと嫌いでした。
序盤でねっとりじっくり主人公達の日常を描いている段階で、あのちょいとばかし独特のスロー具合があまり合わなくて心配でしたが、後半のまんま「パージ」みたいな絵図になってからの方がイラッとするまさかの展開に。
そもそもじっくり映す割には主人公グループは、二人を除くと影が薄くてあんま印象に残らなかったです。

その「パージ」な雰囲気になるまでが割と唐突ではあるんですけど、それはそこまで気にならなくて。
周りの人間が全然信用出来ないなら、このご時世あそこまで極端になるのもおかしくないかも知れませんしね。
というか実際、SNSって日本だけの問題を見ても人類には早すぎたツールな気がする。
何年か前から湧いて出たバカッター然り、何故か自分の馬鹿っぷりを率先してアピールする輩が増えまくったり、道徳心の欠片もない人擬きがわんさかいたりで、そういう奴らのスクショされた画像を見るのも胸糞悪いので俺はTwitterもインスタもFacebookも一切やっていないのです。勿論、やっている人全員を否定している訳ではありません。
マジでああいう人達って、モラルどこに行っちゃったんですかね?レバノン?

何ならこのフィルマも似たようなものなので、始めた当初からイタい自称映画通みたいなやつに絡まれたらすぐ辞めよ…と今もビクビクしながらやっていますが、意外とまだ大丈夫なもので。

…話を戻しますと、何が一番嫌だったかって後半の主人公がドドーンとスピーチをかます場面がありまして。
そこから急に「女性が男どもに立ち向かう」って流れになるんですよね。
これには驚きました。本作においては男女関係なく全員苦しい思いをしている筈。
何なら騒動の引き金になったのは市長の個人情報の漏洩で、その次に標的になったのは校長と、オッサンが連続で晒されていたのに。
主人公が女子グループとはいえ、このあからさま過ぎる展開には困惑しました。
で、彼女らが不自然な形で大量の銃器を入手して街で荒くれる野郎どもに銃を撃ちまくる、本来なら爽快なシーン。ここさ、相当長い間撃ってるけど誰も弾切れしてなかったと思うんですよね。その後の本当に彼女らが女性代表として、街を歩くシーンと併せて「あぁ…はいはい。」て感じで。

特に今の世の中の流れで、こういった女性優位や人種の多様性というものが映画において積極的に取り入れられていて、別にそれは良いとは思うんだけど今作みたいに「いや性別の問題じゃねぇじゃん」っていう作品でそれをやられると、非常にしらけます。

ついこの間スティーブン・キングの多様性に関する発言が話題になっていましたが、あれ個人的には全然間違ったこと言ってないと思いますし、あの発言が多様性を否定するものだともちっとも思えなかったんですよね。
ただ、俺が見たニュースサイトで直にキングの件の発言のページにいけたので、覗いてみたらばいきなり''You're wrong.''ってコメントが出てきて笑っちゃって。
その後もやたらキングを多様性を受け入れられない老害扱いしたコメントが多くて見るの止めたけどさ、あれもう少し調べたらキングはそれについて更に言及していて。
その文を読んだら(というか普通は読まなくても)キングがそういう思想でないことは明らかなのに、一つの文にだけ影響されて噛み付いている''多様性''大好きな皆さんを見て「真に人類みな平等になれるのって、何億年後だろうなぁ」とワクワクしちゃったよ!

だから俺が今作について感じた不満も、大々的には言い辛い風潮になっている気がするのは些か考えすぎでもないかも。
俺としてはどんな俳優や監督を起用しようが面白い映画が観られればそれで良いんですけど、今作みたいにこういった要素を物凄い雑な形でこれ見よがしにぶち込んでくる作品が増えると逆に映画界の視野が狭くなったなーって思うようになっちゃいそう。

そしてそれを差し引いても全体的に粗かった部分が悪目立ちしていたし、一番気になっていた事件が一段落したあと、住人たちはどう他人と接していくのかといった描写が全く無かったのでとにかく残念でした。