このレビューはネタバレを含みます
「さすらいの青春」は、優しさと激しさを込めて、青春への愛惜を謳いあげた、甘美な作品ですね。
ジャン・ブレーズ扮する、若者オーギュスタンは、道に迷った森の館で、ブリジット・フォッセー扮する、美しい娘イヴォンヌと出会い、その面影を追い慕うことになる。
やがて再会した彼女と結ばれたものの、男同士の友情を貫くため、旅立たねばならない。
そして、ようやく親友との誓いを果たして帰って来た時、彼女は世を去り、残された我が子を抱いて、オーギュスタンは男泣きに泣くのだった。
遠く過ぎた日、若者は冒険に憧れ、夢を追い、純粋を求めて、肉体と魂の放浪を続ける。
その追憶の影絵の儚さを、運命のいたずらのむごさを、この映画はむせかえるばかりの情緒と、透明な繊細さで描いていますね。
凝りに凝ったカメラが、19世紀末のフランスの田園風景を、印象派の画調で捉えて、うっとりとした気分にさせてくれます。
だが、主人公オーギュスタンの恋の苦しみにも増して、私の心に迫ってくるのは、彼にひたすら献身する親友フランソワの存在だ。
この青年は、自分の心情は一切語らず、イヴォンヌへの慕情を深く心に秘めて、じっと耐えるんですね。
愛する者を全て失い、幻にも似た青春の宴が、音もなく幕を閉じるラストで、ひとり孤独に立ち尽くすフランソワの姿が痛ましい。