ヒルコ

岬の兄妹のヒルコのレビュー・感想・評価

岬の兄妹(2018年製作の映画)
3.8
ふたりが客を探してる時に流れるクリスマスソングの残酷さたるや。

片足を引きずって歩く障害者のお兄ちゃんが面倒をみるのは、知的障害を伴うであろう自閉症の妹。
頼れる人、いない。お金、ない。電気、止まる。超汚い身なり。
そして妹はとうに処女を失っている様子。
「連れてきて良いレベルじゃない」妹を売るお兄ちゃん。
妹はその「仕事」を受け入れ、むしろ積極的に頑張る。

考えたくもないけど、じゃあ自分ならどうするかって話になってしまう作品。
できることは本当にない。八方塞がり。
死ぬのが嫌なら何をどうしても生きるしかない。
選ぼうにも選択肢がない。
(化粧道具とかは盗んだのかな?拾ったのかな?)

まあ本当に、いろんなところがリアルです。
主演の二人は本当に素晴らしい。
美術セットも設定もリアリティをどこまでも追求してるかのように不快です。

映画の山場としては、
1 お兄ちゃんが窓越しに客から頼みごとを断られるところ
2 妹がお兄ちゃんに大切な宝物を渡すところ
3 ラストシーンの二人の表情
だと思いますが、まったくもってポジティブさのかけらもなく、
心底「あーあ・・・」と絶望を突きつけられる思いです。

お兄ちゃんがこれからどう頑張っても、
例えばここに行政の手が差し伸べられても(あり得ないことなんだろうけど)、
妹が自分の生きる意味を見つけてしまった以上、
もう周りができることは何もないような気がする。

私たち一人一人に与えられてるはずの「幸福追求権」とは何かを、
考えると言うより感じさせられた作品でした。
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