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岬の兄妹のトレバーのレビュー・感想・評価

岬の兄妹(2018年製作の映画)
5.0
Filmarks試写会にて鑑賞しました。

[追記]
この映画に限らずなんですが(例:万引き家族やフロリダ・プロジェクト)
貧困等生活に困窮した映画だと決まって、
生活保護を何故受けない、とか行政を頼らない
のは分からないという声と、自己責任論が
必ず聞こえてきます。

負のスパイラルに陥っている時人間は時として正常な判断が効かなくなるものです。
普通に生活出来ている人間には、何故そこで
状況を変えられない、となるでしょうし
物事を常にロジックで判断出来る方には、
全く分からないことだと思います。

増してやこの映画の、兄のほうはシンプルに言うと
バカですし、弱く言い訳ばかりの人間です。
おそらく考えが回らないでしょうし、
周囲の助言が仮にあったとしても理解出来ない
でしょう。
どうにもならない状況に陥っている時、
頭が回らない人間が冷静に行動、判断出来るでしょうか。
生活保護は、窓口に生活に困ってます助けてくださーいとお願いしたらホイホイ助けてくれるわけではありません。手続き、書類、審査が必要です。

あと、バカなんだからしょうがないじゃん、とホリエモンのように自己責任論で突き放す考えの方でしたら、こういう映画はご覧にならないほうがよろしいかと思います。

追記終了。ついカッときて書いてしまった。
後悔はしていない。


いやあ、、、。
とんでもないものを観てきました。
まさに、劇薬。
コンプライアンスという名の忖度、自主規制に
遮られないよう監督が完全自主制作で作った、
露悪的と言われかねないほどの描写、演出。
(あらすじをご覧頂いて想起出来るレベルを
遥かに越えてきます、あらゆる意味において)

映画鑑賞の際に共感できるかどうか、
納得のいくエンディングを迎えるかどうか、
感動出来るかどうか、、、。
そうした観点で鑑賞する方達を完全に突き放しています。
同情すら許しません。
しかも、救いようのない展開なのに笑わせます。
ここは笑っていいものか、と一般的には不謹慎と
される笑いだったりしますからタチが悪い。
一瞬の輝き、これも幸せなのか?と思わせる時も
あり、鑑賞する者の感情を振り回し、価値観や
倫理観に揺さぶりをかけてきます。

全く受け付けない人もいるでしょう。
おそらく賛否両論どころではないと思います。
しかし、チャレンジングな題材をここまで
極端に振り切った(しかも、演出や台詞、
シーンに無駄が無い!凄い完成度です)
作品として完成させた監督の力量と、
素晴らしい演技力と存在感だった兄妹を演じられたお2人に(特に、妹役の和田さんが凄まじい。
試写が終わり退場時に見送って頂いたんですが
普段はとても綺麗な方でした、、、)
ボクは最大級の賛辞を贈りたいです。

試写会の後のトークショーで樋口毅宏さんが
この映画は第2のカメラを止めるな!になると
熱く語られていました。
それは難しいかな、、と思いますが、
そう言いたくなる気持ちはよく分かる、
とんでもない熱量を感じた、傑作です。

胸糞が悪くなったり、世間的には
最低だ、差別的だ、下品だ、と言われる
事も表現だし伝えたい事があるんだ、
と受け止められる方には、是非観て頂きたいです。
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