菩薩

テル・ミー・ライズの菩薩のレビュー・感想・評価

テル・ミー・ライズ(1968年製作の映画)
4.0
ティック・クアン・ドックのサイゴン・アメリカ大使館前の焼身自殺と言えば多くの方がレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの1stのジャケを思い出すだろうが…ってのは置いといて、彼の行為に触発されこの映画で語られるノーマン・モリソンの様に、自らの身体を炎で包みそれをもって最大限の「抗議」としたアメリカ人はのべ8人いる。一方アメリカが最大限の「関心」をもってベトナムに「正しい」軍事介入をし、そうして大地を焼き払い生じた民間の犠牲者数は…各自「関心」をもって調べるが良い。後にペンタゴン・ペーパーズとして明るみになる嘘、嘘をつき続けても押し通した「正当性」と、その結果としてのアメリカ自身の「焼身自殺」に巻き込まれた多数の人々、そして今もアメリカは「正しい軍事介入」をシリアで続けている(ついでに言えばチベットでは焼身自殺が…)。世界は今も嘘で回る、歴史上最もパワフルな国であるアメリカ、だがそうでありながら、他の歴史上の大国と比べ最も影響力は少ないのだと、俳優は演じてみせる(ここ笑いどころ)。映画=セミ・ドキュメンタリー=戦争を一つ繋ぎにし、今も無関心を装うサイレント・マジョリティを挑発する、50年経った今も、世界は嘘で回り続けているのか、少なくとも日本という国は、不正と無関心と自暴自棄、そしてコミュニケーション不全で成り立っていると言わざるを得ない。国会前で誰かが焼身自殺をしたとしても、きっと我々はすぐ忘れてしまうだろう、だが自殺の正当化=英雄視も不必要な後追いを追う、それでも大衆は「関心」の維持の為の「生贄」を欲するのか。無関心こそが悲劇の始まり、関心の暴走を止め、嘘の正当化を防ぐ為に、我々は思考を止めるべきでは無い、50年前の火は、今も燻り続けている。
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