カイ

隣の影のカイのネタバレレビュー・内容・結末

隣の影(2017年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

悪意に満ち満ちた傑作。厭な映画ではあるがディティールへの拘り故に凄まじいリアリティを持って観客に迫る。導入からして天才で、ベットを共にする夫婦。妻は夫に背を向け音楽に耳を傾ける。ここで二人の冷え切った関係性を示しながら唐突なセックス。解釈を間違ったか?と思いきやそれは夫が観るポルノだった。しかし出てるのは夫!なんで!という疑問と共に映画の幕は上がる。端的に言えば、人間の社会性の崩壊、或いは他者という存在の煩わしさ、そして「文明人」の薄皮の下に眠る人間の果てなき浅ましさや卑しさを丁寧に描く一作。不実を働きながらも娘とは離れたくない男。その兄の死を受け入れられない母。それらになんとか向き合おうとする父。そんな一家に隣人から入る苦情。「お宅の木がウチの陰を作ってるんですが…」そんなありふれた隣人トラブルから地獄のようなラストまで、わかりやすく不協和音主体のスコアが導く。犬の糞を投げ、カメラを置き、ネコがいなくなれば腹いせに犬を拉致して剥製にしてやれ!ババアのやりたい放題は凄まじい。その間、男は特に何も出来ない。結局件の木を隣人は切り落とすが、その下敷きに息子はなってしまった。最高のピタゴラスイッチ!舞台袖にいた男たちが最後は血だらけで殺し合い、映画は幕を閉じる。と思いきや!最後のシーンで度肝抜かれる。歪み切った悪意に満ちたラストに脱帽
カイ

カイ