七沖

この世界の(さらにいくつもの)片隅にの七沖のレビュー・感想・評価

4.5
〝ここではひとりぼっち、と思ってた。〟
名作『この世界の片隅に』に追加シーンを加えた作品と聞いて、正直観賞するかかなり悩んだ。追加シーンがあるくらいなら最初から入れといて欲しいと思ったのが本音だし、合計約30分の追加シーンが蛇足だったらどうしようという懸念もあった。

だが、その心配はいらなかった。観てよかったと素直に思った。

遊郭で暮らすりんとの交流が主な追加シーンだが、これが思いのほか重要だった。このシーンの有る無しで、すずと周作との関係性が結構違って見える。
より人間関係に深みが増して、この作品のことがさらに好きになった。

そして、一番衝撃的だったのは、クラウドファンディングのクレジット中に描かれるエピソードだ。
え、まさかあの子が…!

前作で描かれていた戦時下の人々の暮らし描写はそのままに、浦野すずという一人の女性の感情の揺れを前作以上に丁寧に描いた作品だと感じた。
名作の単なる焼き増しではない。
もし前作を観たからこそ本作を観るのを悩んでいる人がいたら、ぜひ観て欲しい内容だ。
七沖

七沖