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マガディーラ 勇者転生のdm10foreverのレビュー・感想・評価

マガディーラ 勇者転生(2009年製作の映画)
3.9
【古き良き映画に見るバーフバリ前後】

「バーフバリ」シリーズのS.S.ラージャマウリ監督作品。
最近でこそインド映画にも色々と幅が広がってきたけど、それでも日本ではまだまだ俳優や監督の名前だけで「ヒット間違いなし!」というところまではいってないんじゃないかな?(勿論、アミール・カーンとか有名な俳優さんもいるけどね)

で、今までインド映画を観るとき、「マサラムービー」「ボリウッドムービー」等々様々な呼び方や括り方をしてきたけど、昨今の流れの中に「バーフバリ」という強烈なジャンルが一つ出来てしまったように感じる。
今作も同じ監督の作品という事もあってか、戦闘シーンなんかは迫力あったし、それこそ劇場で見たらもっと興奮できたよな~と思うポイントも多々。

もし「バーフバリ」を期待して見に行っていたら「あれ?」ってなったかもしれない。
全体的にコミカルテイストで歌や踊りもバンバン入ってくる。

でも別に嫌な感じはしない。寧ろとても懐かしい感じ。

そこにはマサラムービーの取っ掛かりで観た「ムトゥ~踊るマハラジャ」のテイストが溢れているのだ。
確かにバーフバリは面白いし、他にもインド映画はどんどん新しいものを作り出してくる。映画大国としての自負もそうだろうし、実際に「よくできた映画」が多いのも事実。
でもその根底に「古き良きマサラムービー」という源流が脈々と流れているからこその積み重ねというか、しっかりとした土台の上だからこそ、新しい芽が沢山生えてくるんだなと思う。

この映画自体は別に古臭い映画ではない。しかし、物語の根幹を成すテーマは今までのインド映画でもキチンと描かれてきた「絶対的な信仰的思考」や「勧善懲悪」「分不相応の悲恋」など。
そこに歴史的(神話的)な話を絡ませて、薄っすらと内心的な信仰心とかも煽る。

400年前に悲劇的な運命によって非業の死を遂げた若い2人が、現代に輪廻して再び出会うが、同時に恋敵も輪廻していて・・・大まかにいうとこういうストーリーの中で、中心となるのは過去のそれぞれの因縁。
で、そこに「王国の戦士と姫君との身分違いの恋」とか「分かりやすいくらいに憎たらしい恋敵(姫からも猛烈に拒絶されている)」とかがいて、更に誰であろうとも絶対に尊重しなければならない「国王の命令」や「神のお告げ」などがどんどん二人の仲を切り裂いていく。とってもわかりやすい「王道設定」。

で、こういう時に必ず出てくる「シヴァ神」。
ヒンドゥー教の神々の中でも最高ランクに位置する神様の一人とされていますが、実は主人公の400年前の戦士の時の名前「バイラヴァ」はシヴァ神の異名の一つなんです。
破壊の神を司るシヴァ神の恐ろしい性格を抜き出した呼び名だそうです。
つまり恋敵にはめられて非業の死を遂げる主人公は、実は「怒ると怖い最強の武神の生まれ変わり」という設定です。
こんなのインド人じゃなくたって萌えますよね。

『やれやれ~!徹底的に恨みを晴らしてやれ~!お前は最強のシヴァ神の生まれ変わり、バイラヴァなんじゃ~~!』

インドの劇場からこんな声が聞えてきそうな感じすらします。

伝統的な設定や、特にインド人の精神性(宗教的な萌えポイント)をきっちり踏襲しながら、かつ新しい作品を生み出すラージャマウリ監督も凄いと思いますが、そういう監督や作品を次々と生み出すインド映画の懐の深さみたいなものも感じますよね。

う~~ん、奥が深い。軽い感じで楽しめる娯楽映画ではあるんですが、そういう根底というかベースの設定なんかを調べてみると面白いことが結構散りばめられている。
こういうの好き。




因みに・・・
日本の「大黒天」もシヴァ神から来てるってご存知でした?
さすがに大黒天は破壊の神ではありませんが(笑)
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