この映画をある人に教えてもらうまで、ぼくはチリー・ゴンザレスという音楽家、名前でググると「天才」「稀代のエンテーテイナー」と枕のならぶ男のことを知らなかった。
その状況で本人が登場しているはずのこの映画を観ても、これはフェイクドキュメンタリーなんじゃないか?(実際その体で作られている) この尊大で自己矛盾に満ちたナイーブなパンクスは本当は存在しないんじゃないか? と感じるし、観終えた後に彼の演奏を Spotify で聴いている今もその感覚が拭えない。
そんな化かされたような体験についほろっとニヤついてしまう。いま部屋では、チリー・ゴンザレスによるメランコリックなピアノの旋律が流れている。
昨日観た『関心領域』と繋げる気はないが、英語版 Wikipedia によると、彼の両親は第二次世界大戦時にハンガリーからカナダに逃れて来たユダヤ人で、父親や祖父の信仰は「成功」で、彼もまたそれを信奉しているそうだ。