zomychan

mid90s ミッドナインティーズのzomychanのネタバレレビュー・内容・結末

-

このレビューはネタバレを含みます

A24の作品を初めて見た。汚い言葉遣いが飛び交う声が聞こえるシーンから始まる本編。

▼私は教員なので変に考え込んでしまった

スティービーは13歳なのか。それがちょっとした驚きだった。もっと小さいかと思ったけれど、さすがに小学生であれはないか。私は新卒教員で中高生を普段みているので、どちらかというと、立ち入り禁止の場所で食事をしていたときに注意にやってきた警備員や、「ドラッグを飲ませないで!!」と溜まり場である店に来た母親の立場で見てしまった。

本編では子どもたちがいたいと思える自分たちだけの場所は家や学校ではなかったし、現実のフラストレーションに対する救済の直接的なきっかけは人間じゃなくてスケートボードとか音楽とか雑誌とか、そういう文化なんだと思ったなぁ。無責任かもしれないが、ある意味自分は気が楽になった。
好きなものを見つけて近づく力と自分を守るための分別をつけるための経験はやっぱり学校だけじゃ無理だから、自分の仕事は何なのか少しだけ教えてもらった気がする。

▼好きなものを深める時間

学校でも家でもない居場所として、自分がいいなと思うものを追求する感じ、ひしひしとなんだかうらやましくなった。あまり苦労しなくてもなんとなく好きなものにたどり着けてしまえるようになった今と違って、私も10代のころは姉の部屋に入って漫画とか雑誌みたり、ひたすら音楽を聴くだけの時間があったよなぁとか、思った。今、自分がとてももったいない時間の使い方をしている気がして、もっと自分の好きなもの、いいと思うものはいいな〜と言って、いいよね〜と言い合えるコミュニティがあったらなぁ、と感じた。これはスティービーが兄の部屋に入ったり、一人で部屋で雑誌を読んだり、仲間とおしゃべりやスケートボードをしてるシーンで、ひしひしと感じた。

▼10代のリアル

狭い世界や人間関係がすべてでしかなく、その現実にうんざりしながら、なんとか楽しめることを探して、ぼんやりと未来を想像しても方向性を決めて自分だけで進むことも難しい地に足がついていない感じ…の兄貴分の男の子たちにリアリティがあってよかった。スティービーから見れば「クール」でも結局彼らも自分と他者を比べることはやめられない。少なからず仲間といれば、自分が好きな自分でいることはできていたのではなかろうか。

些細な出来事で互いの人間関係が揺らぐのも、関係性が閉じて固定されているティーンに特にみられる情動で、すごく細やかに丁寧に描かれてたなぁ。全然あの子達の世界には大人がいなくて、信じてもいないし期待もしてないのだな、という気もした…。木陰で進路の話をしているとき、本当は映画を作りたいフォースグレードの「わかんないけど車両管理の仕事を親父とやると思う」の「わからないけど」の枕詞が、自分の人生なのに自分に主導権がない無力さがあったなぁ。自分の人生を決めて進むのはいくつになっても難しいことのような気がするから、最後にみんなで事故った後のスティービーの病室で無口フォースグレード自分が作った映像を流したのはよかったと思う。
zomychan

zomychan