品川巻

mid90s ミッドナインティーズの品川巻のレビュー・感想・評価

4.5
本当に最高だった
この時代に青春を送った訳ではないけど、Bad BrainsやMisfits、モリッシーが流れるだけでアガるし、中高時代に親しんでいたコンテンツに近い音源や画質で、どこか懐かしい気持ちになった。

貧乏だから、殴られるから、誰からも期待されていないから、そして恥ずかしいから。
不良たちは「やらないこと」に何かしらの理由をつけてスケボと酒瓶を片手にフラフラしている。そんな中で最後、自分のやりたいことを形にした映画監督志望のフォースグレードの映像で締められることに意味がある。
誰かが「終わりのない終わり」と書いていたけどまさにその通りで、夢を具現化した荒いビデオが、閉鎖的で退廃した街から彼らを一歩踏み出させてくれるようで情緒的だった。

そしてとにかく不良のリーダー、レイが人格者で推し◎
不良仲間でまだまだ未熟なルーベンとの対比もあってか、彼の器の大きさにどんどん惹かれていく。

「水を入れてこい」の一言でも、
レイ:「水を飲み干した人が入れてこい」
ルーベン:「お前は俺の下っぱだから入れてこい」
では意味合いが違う。
また、ルーベンは「感謝をするのは女々しくて恥ずかしいことだ」と言い、一方でレイは「感謝は最低限のマナーだ」と諭す。

尖っていることが大人、というポリシー自体が子どもっぽいと気付けていないルーベンやスティーヴンの指標となってくれるレイは、物語のハイライトとも言える。私もあんな先輩が欲しい。

ヒール役でもあるお兄ちゃんや、いつまでもイタいルーベンにも屈折する原因になった過去があり、自分を誇示することで歪曲した心を守っていたようにも見えた。彼らがこれ以上傷つくことを止めるかさぶたのような存在がいなかったからこそ不良コミュニティが自分の避難所になり、そこでの顕示が生活の中心になるーーどの登場人物も、攻撃的になるのは寂しさの裏返しだと思うと誰も憎めなかった。
あそこまで痛みの伴う青春を送れているのも、少しだけ羨ましい。

一番好きなシーンは、あんなに喧嘩しあった彼らが、スティーヴンのために夜通し病院で待っていて寝落ちするところ。お母さんもあんな姿見たら泣いちゃうよね。

そしてampmが懐かしすぎた。
品川巻

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