品川巻

野いちごの品川巻のレビュー・感想・評価

野いちご(1957年製作の映画)
5.0
人生であれが最後だったんだなと思う瞬間が増えてきた今の私にとって凄く必要な映画だったし、会いたくても会えない人たちとの思い出とか、当時の自分の振る舞いが適切だったかを振り返るきっかけにもなった。

冷淡、利己主義、配慮の欠如によって身近な人々を傷つけたことで、「孤独」という罰を(夢の中で)受けるイサク。優しさが無かった訳ではないだろうけど、本心は言わないと伝わらないし、不器用という言葉では片付けられない。失われたものへの愛惜は、死にゆく老人の現在の残酷さをより強調するし、大好きな人たちは、思い出すことで却って自分を苦しめる存在となる。笑顔を作っても胸が痛い、としょんぼりするイサクを見て、こっちまで胸が痛くなった。

終わることに対する恐怖や寂しさではなくて、安らかに終えるための贖罪を描いた1日限りのロードムービー。死を目前にした気難しいおじいちゃんが主人公ではあるけど、何かの節目を迎える誰もが共通して通る過程がそこにはあり、ラストはささやかな門出のようにも見えて、私にとっては早めの卒業式のような映画になった。

道中で出会った若者が、イサクの頬を撫でるシーンと花束を持ってくるシーンが愛おしすぎて、そこは何回も観直した💐
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