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mid90s ミッドナインティーズのloomerのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

90年代半ば。ちょうどわたしも同年代なんだけど、わたしはアメリカのティーンではなかったので、スケートショップに出入りしたり…みたいな経験は当然ない。むしろ、進学校といわれる学校に通って、真面目に授業を受けたり部活に勤しんでいるクチだった。
見るまでは、この映画は90年代カルチャー的あるあるを楽しむ映画なのかな?と思っていたんだけど、スティーブを始めとする彼らが経験したことにはわたしにも覚えがある。アコガレ、嫉妬、イキり、(今にして思うと些末な)暴走。それと、友だちとのほんと〜にくだらない会話、ふざけた遊び。

この映画は「物語」として誰かをわかりやすく救済したりはしない。混沌とした状況に一筋の光が…?ある…?ない…?みたいなところで終わる。
最後のアレは、そのうち来るぞってわかってたのに、その前の5人揃った絵面でもう泣いちゃう。「泣いちゃう〜」ってなってたらそのままバッサリ終わった。あの5人でいるのは、あの後そう長くはなかったんだろうと思う。10代の彼らの互いのヒリヒリした状況が彼らを「仲間」として維持できる時期はひと夏の間だけだったんだろうと思う。

先日わたしは誕生日を迎えて40代の仲間入りをしたんだけど、彼らの母親にあってもおかしくないこのぐらいの歳になると映画の登場人物みんな抱きしめたくなるんだね。なんならスティーブのお母さんも抱きしめたい。
特にレイとの夜更けから明け方のスケボーの場面は美しくて、そして美しさを隠さない真っ直ぐな演出にまた涙を誘われて、スケボーの出てくる映画にハズレなしの気持ちをまた強めた。
お兄ちゃん役のルーカス・ヘッジズとの場面はどれも良かった。お兄ちゃんの鬱屈が見事に現れていたと思う。この間見たキム・ボラ監督の「はちどり」でも見たけど、兄弟(妹)間の暴力は割とあることなんだよね…。(そういえばあの映画も、韓国版mid90sである!)
でもあれだけ暴力で屈服させても、ある場面では兄弟の絆は失われていない有様が、家族ってそういうところあるよねと思わせる物凄い説得力を持っていた。オレンジジュースを一口ずつ飲むだけでそのことを想起させるのすごい。これ、ジョナ・ヒルの半自伝的な話なんだよね。

完全に信用できるジョナ・ヒル監督のこれからの作品がまた楽しみになりました!
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