かすたん

劇場版 Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- Wandering; Agateramのかすたんのレビュー・感想・評価

1.5
大型スマホゲーム「Fate/Frand Order」1部6章の劇場版。Fate世界におけるアーサー王伝説、その終わりに深く関わった騎士と主人公たちの旅路を描く。

まず大前提として、私はFGOのファンなのでかなりバイアスのかかった評価になってしまうことを許してほしい。

そもそも本作品は「シナリオがいい」という理由で人気のあるゲームの、2部5.5章まであるうちのたった1章(2021年5月現在)だけを切り取った作品だと知らなければならない。確かにファンからは人気のある章ではあれど、ここに至るまでの様々な旅路には一切触れずに話が始まり、初見の方には何も伝わらないまま話が進行してゆくし、原作ファンからしてもオリジナル展開が多い、しかも原作の名シーンや登場キャラを削るといったマイナス方面のオリジナル展開ばかりなのだから良い評価になるわけがない。なんか人気あるから劇場版でもしてみようか、という思いつきによって制作されたと誹りを受けてもスタッフは泣きながら土下座をするしかないだろう。

まずは劇場版アニメとしてはあまりに手抜きな作画が目立つ。時間稼ぎが見え見えな誰も動かない謎の静止シーン、要所々々で崩壊する作画(素人がキャッキャと騒ぎ立てる作画崩壊(くずし)ではなく、顔面の比率がずれたまま数秒経過、といった真っ当な作画崩壊)、本編きっての見せ所であるはずがなんかでっかい光と光がぶつかってホワイトアウト的ないかにも浅い演出、誰が誰だか分からないまま視聴者を置き去りにしていくシナリオ、脚本全体として見せ場の少ないまま淡々と進むストーリーに設定説明に終始した台詞群など、擁護したくてもできない有様だ。

しかしまぁ考えてみると、そもそも原作は文庫一冊強(角川スニーカー換算)の文章量があるうえゲームシナリオ、すなわち地の文を想定した場合は二冊弱にも及ぶ文章量を誇るものなのだ。そのうえ、それまでに積み上げた綿密にして長大な展開は省いて上映せよという前提がある。それを踏まえると、大長編小説のクライマックス場面のみを映画化せよという無茶振りに対しては充分に応えられていたのではないかとも思う。企画の時点で誰かがストップをかけるべきだったし、あるいは企画が通ったのなら原作ファンを喜ばせるためだけに終始すべきではなかろうか。現状では、初見の方向けにオリジナル展開にしたのに初見の方には何も通じず、原作ファンにとってみれば原作の名場面はカットされるといった、誰の得にもならない魔改造オリジナル映画としか言いようがない。
このたび公開された後編は出来が良いという情報から、心の広い原作ファンにのみ視聴を許された、90分に亘るプロローグといった立ち位置とみるのが妥当だろう。

劇伴はよかったので1.5点とした。
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