キャプまる

太陽は動かないのキャプまるのレビュー・感想・評価

太陽は動かない(2020年製作の映画)
3.7
設定やアクションは良かったがこの内容をするには尺が足りない印象なうえ、主に回想シーンが絡む構成が悪くストーリーを十分に楽しめない作りになっている。
産業スパイという情報戦が重要になってくる話なのにストーリーやキャラ自体の情報がわかりづらすぎるのはもったいないなという印象。

まず良かったところとしては、アクションシーンが邦画のなかでも見ごたえがある点。序盤から捕まってる山下を取り戻すために、狭い屋内戦闘からカーチェイス(言うほど車を活かしたアクションはなかったが)そして最後の電話ボックスのシーンまで興味を引く内容だったのが良かった。

これをしないと冒頭のアクションシーンの状況がわからず緊迫感が出ないから仕方ないとはいえ、冒頭から怒涛の説明映像が流れたので少し笑ってしまった。

田岡が柄シャツ着てるのは地味に好き。
デイヴィッドがめちゃくちゃかっこいいので田岡が柄シャツで存在を主張しないと危うくデイヴィットに主役の座を食われるところだった。

あの過去回想を経ての鷹野の「明日のことなど考えなくて良い。1日を生きろ。1日だけなら耐えられるそしたらまた明日を生きれば良い。」というセリフは良かった。虐待された鷹野だからこそ重みのあるセリフだった。


次に悪かったところとしては、回想シーンを挟むタイミングが謎な上に一つひとつの回想が長い点。
ただでさえライバルの産業スパイとそのまた別勢力のスパイも出てきて勢力図がしっちゃかめっちゃかで各々の目的もわかりづらいのに、謎のタイミングで回想を挟むため現在の時間軸に戻っても誰が何の目的で何をしているのか?がわかりにくく、ストーリーを純粋に楽しめなくなるので構成を失敗しているなと思った。

そのうえ、主人公と考え方や人格を構成する回想は説明セリフでパパッとやって、別に主人公の原点にはなってないであろう甘酸っぱい青春はたっぷり尺をとってするのが優先順位が違う気がして腑に落ちない。回想なんだからもっとテンポよくして欲しかったし、あのキャラの設定を活かすならあの女の子は明らかにいらなかっただろと思ってしまう。おそらくラストで描きたいいことにつなげようと欲張った結果本筋に影響が出てるのが酷いなと感じた。

あと仕方ないがキャラクターと勢力が多すぎる。敵も産業スパイなので何を考えて行動してるのかがわかりにくいのは良いが、ドラマを見てない人からすると主人公達すら初見なのでもう少し勢力図をわかりやすくしたほうがストーリーに入り込めるし、中盤のデイヴィッドとアヤコのシーンが効果的になった気がする。
どうせならドラマでこの2人を掘り下げて映画ではもう2人の掘り下げを一切せずバディ感だけ出して、映画のゲストキャラの掘り下げに時間を使うとかしたらいいのにと思ってしまう。

そして日本映画だからといって日本語を喋らさなくてもいいシーンが多い。鷹野と会話するときは確かに日本語で喋らないと不自然になってしまうが、決め台詞のシーンとかはカタコト日本語じゃなく喋り慣れてる言語でカッコ良く決めてくれていいのにと思ってしまう。

主人公のキャラクターはしつこすぎるほどの回想で掴めたのは良いがそれに反して田岡の掘り下げが少なすぎる。それでも赤い点滅を見て顔をしかめたりと少ない描写の中でも田岡がこの生活が嫌だということは充分伝わったので、なおさら描写の巧さと尺のアンバランスさが凄いなという印象。

少しネタバレになるが、
主人公達がつかまりすぎてて笑えた。藤原竜也が捕まったと思ったら次は田岡が捕まったりとどちらか必ず捕まってるので二人のバディ感は無かったのがとても残念。これはドラマでは二人の関係性やバディ感が描かれてたのかもしれないが、映画を見る限りでは描写がない。

ドラマ版と違って今回は他国のエージェントの思惑に振り回されっぱなしで結局最後まで持って行かれるのであまり主役たちに美味しいところはない。せめて産業スパイで情報屋ならそれらしいオチがあっても良かったんじゃないか。情報的にも産業スパイ的にもやられっぱなしなので爽快感はない。
今回は相手が相手だから仕方ないとはいえ映画第二弾でやるような展開とオチなので物足りなさを感じてしまう。

エンドクレジットで映画にないWOWOWのドラマのシーンが流れてたのはさすがに笑ってしまう。なんで今ここで宣伝するのか?ア○ンジャーズみたいにエンドロール終わった後にちょこっと映像見せたら良いのに、なぜエンドロール中ずっと映画に一切出てきてない映像を流すのか?映画の余韻もクソもないのか。ドラマの存在すら知らずに見に来た人はこの映像は何なのか?と混乱するだけではといろいろと残念な気持ちになった。主題歌の「泡」はとても良く曲調も余韻に浸れそうな感じなのでなおのこともったいない。
キャプまる

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