難解。
これぐらいストーリーそのものが難解と思った作品は珍しい。
ところがサスペンス仕立てに加えて、カメラワーク、映像が気になって途中下車もさせてもらえない、不思議な魅力の映画だった。
#1356 2023年 391本目
2018年 ハンガリー🇭🇺フランス🇫🇷映画
監督:ネメシュ・ラースロー
デビュー作「サウルの息子」がカンヌ国際映画祭グランプリのほか、アカデミー賞外国語映画賞受賞した監督。この作品は長編第2作
製作:シポシュ・ガーボル、ライナ・ガーボル
脚本:クララ・ロワイエ、マシュー・タポニエ
第1次世界大戦前。
1913年、ブダペスト。
イリス・レイテル(ユーリヤカブ)は、彼女が2歳の時に亡くなった両親が遺した高級帽子店で職人として働くためにブタペストにやってくる。
しかし、現在のオーナーであるオスカール・ブリッルはイリスを歓迎することなく追い払王室とするが、なんとか働くことはできるようになる。
この時になって初めて自分に兄がいることを知る。
イリスはブタペストの町で兄を探し始めるが、兄を探すのは彼女だけではなかった。
そんな中、ブタペストでは貴族たちへの暴動が発生。その暴動はイリスの兄とその仲間たちによるものだった。
この高級帽子店は何やら王室と裏の関係がありそうなのだ。イリスはその現場に潜り込もうと企てるのだが…。
まずなんと言っても気になるのが、カメラ視点の大半が主人公イリスの視界と重ねていること。スクリーンも彼女が見た物や、彼女の周囲1メートル以内の物しか映し出されない。そのため画面の半分は彼女の後ろ姿なのだ。
彼女もそうだが、何故か登場人物が全てというぐらい緊張している。何故だろう?ずっと考えさせられることになる。すぐにでもなにかが起きそうな緊張は最後まで続く。もちろん登場人物が微笑むようなシーンはない。
この緊張した登場人物が彼女に秘密めいたことを語りかけるから、いよいよ謎が深まる。
謎が謎を呼ぶ絶対に解けそうもない謎。
謎解きは貴方がやるしかない。
本作で提示される様々な謎や出来事は、舞台である20世紀初頭の、混沌としたオーストリア=ハンガリー帝国の象徴でもあると、ネメシュ監督は説明している。