どらどら

ナイチンゲールのどらどらのレビュー・感想・評価

ナイチンゲール(2019年製作の映画)
4.8
- This is my country, this is my home.
- You can’t kill those already dead. (•••) I’m not your anything. I belong to me,no one else.

奪われたもの同士の連帯
生きるための連帯
いな、「人間」としての連帯
いかなる暴力も、死でさえも、「人間である」というその尊厳は決して奪えない
彼女の個人的な復讐は、ある出会いを通して、奪われ抑圧されてきた全ての人々の尊厳の回復へと昇華される

血塗られた歴史と現実
追うもの、追われるもの
狩るもの、狩られるもの
奪うもの、奪われるもの
全てが錯綜し合い、混じり合い、血が血を呼ぶ

映画は問いかける
この暴力のはじまりは、根源は、何であったか?
かつてタスマニアという地で起きた殺戮は、何であったか?
いまなお、繰り広げられている差別と暴力に我々はどう向き合うべきか?
我々は、誰と連帯する必要があるのか?

映画はある「暴力」を肯定する
それでも、だからこそ、この映画は祈りだと思う
歌に、朝陽に、希望を託して
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物語の強靭さに魂が震えた
暴力から逃げず、暴力を否定的に描くという綺麗事にも収まらない勇気。白人=悪/黒人=善という二元論に逃げず、白人=黒人=人間であるという根本を堂々と描く勇気。アボリジニの歴史とジェノサイドという歴史を掘り起こす勇気。
とても勇気に溢れた映画だと思う。

作品として極めて優れていると思うのは、山中の追跡劇に脚本としての緊張感が漲っており、メッセージ先行ではなくて、物語として引き込ませること。
そして2人が徐々に心を通わせ、連帯していく姿に観客は希望を託せる構造になっていること。

目を背けそうになる暴力の連続
奪い、奪い返すということの意味
そして、「人間」であるという尊厳そのもの
彼の地は、誰のものであったのか

逃げてはいけない真実が、この映画では真っ直ぐ描かれている。
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