『ババドック』のジェニファー・ケントが監督した1800年代前半のオーストラリアはタスマニア島での出来事を描いた映画。
アイルランド出身の元囚人女性クレアがタスマニア島で夫と子どもの3人でささやかな幸せを育むも卑劣なイギリス軍将校ホーキンスらによってそれを踏みにじられ、穢され、打ち捨てられてしまう。
辛くも生き延びていたクレアは島の北端に向かうホーキンス達を追い復讐することを誓う。
道中、道案内としてアボリジニーの男ビリーを雇い反目しつつも徐々に友情を育みつつ過酷なタスマニアの森を進んでいくのだった。
ブラック・ウォーと呼ばれるヨーロッパ人入植者と現地のアボリジニーが争っている最中の時代が舞台なので蹂躙されていく現地人や人権意識が現在とは違う時代ゆえの差別表現や暴力描写なども容赦なく描いているのでかなりハードなテイストの作品だ。
それゆえに多くの人に勧められる作品ではないが暗い時代にも同情の心や優しさを失ってはいけないというテーマは痛いほど伝わってくるハードな人間ドラマともいえる作品なので心にいくらか余裕のある時に観て欲しい。
エンターテイメント性はないが良質な作品だと思う。
クレアは結局全てを失ってしまうし終わり方も決してスカッとするモノではないが虐げられてきた2人が心を通わせて手を取り合う場面、最終カットの日の出の美しさは胸を打つ素晴らしいシーンだ。観てよかった。
劇中、繊細で美しい歌を何度も披露するクレアを演じたアイルランド出身の女優アシュリン・フランシオーシの卓越した演技も見事だ。序盤のか弱い妻像と家族を奪われてからの殺気立った復讐者への切り替わりはホントにスゴい。
そしてどこかで観たことがある気がしたので調べたら『ゲーム・オブ・スローンズ 』のリアナ・スタークを演じた女優さんだった！他の作品も観てみたいな。
