もの語りたがり屋

ROMA/ローマのもの語りたがり屋のレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
3.7
色がなくても生きている愛が鮮明に伝わってくる

全編モノクロで音楽もないので淡々と静かに進む印象だが、ドラマチックな展開をスマートに差し込んできてその世界に惹き込まれていく。情報が少ない分、役者の機微に注目できるという効果がある。演技未経験者を起用した狙いもあり、息遣いが自然な仕上がりとなっている。

流れていく日常の中にある、奇跡的でありときに残酷な命の尊さが描かれている。表裏一体である生と死を対比させることで、生きていること、生きていくことを改めて解像度を上げて考えさせられる。

彼氏や父親という男が悪のようにされている部分もあるが、それは子どもを産み育てる女性への畏敬の念の現れであると感じる。
そしてまた、決して血のつながりだけが家族ではない。

舞台はメキシコシティでタイトルの『ROMA』は何かと思っていたら、逆から読むと「AMOR」となりスペイン語で「愛すること」という意味。アルフォンソ・キュアロン監督が、故郷、家族、育ててくれた人への感謝を込めた映画だ。

Netflix製作で、ネット配信映画から初めてアカデミー賞が出たのが頷ける作品である。