EditingTellUs

ROMA/ローマのEditingTellUsのレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
3.5
アルフォンソ・キュアロン監督の前編スペイン語のメキシコ作品。エマニュエル・ルベツキのスケジュールの都合により、キュアロン自身が監督・脚本・撮影・編集を務めたと言うことで話題になりました。

まずその能力と労力に脱帽。

テーマは人と人との絆。その表現方法にはたくさんあった。

設定:1970年代の中流階級の過程
使用人という設定から少なからず人種差別が存在し、階級が人種で分けられていたその時代背景の中で、主人公のクレオが1つの家庭の中で、時には使用人として道具のように扱われることはありながらも、1人の人間、1人の女性として家族の一員になっていく。子供たちの関係。奥さんとの関係。お婆さんとの関係。

出産・死・離婚・結婚
1つの物語の中に出会いと別れが数多く描かれている。その多くが予告なしに嵐のように訪れ、去っていく。しかし、1つ1つはその人の人生に大きな影響を与える。時には何が悪いかとかはなく、タイミングの問題なんかもある。別れは出会いと絆が埋めてくれる。笑いに変えてくれる。


家の中に閉じ込められ、人間に飼われた存在。そんな偏った見方を自分に照らし合わせ存在意義を感じるクレオ。しかし、その犬も名前があり、家族の一員、支え合いながら、笑顔を育てていく大切な存在。

ALEXA 65
65mmという大型フォーマットにより、35mmに比べて画角が広がり、見慣れないフレーミングが続く。イニャリトゥとルベツキは”レヴェナント”でクロースアップ+広大な冬山の背景で孤独な燃え流強い意志を表現したが、キュアロンは多くの人物をフレームに入れることでコントラストを使って孤独を表現し、最後にはキャラクターを中心に集め、あえて背景にスペースを空けることで絆を表現した。

ほとんどクロースアップを使わないフレーミングには退屈さを感じさせるようなところは少しばかりありながらも、凝った美術とエキストラのおかげで、設定を言葉ではなく資格的に表現することに成功していた。

メキシコの歴史をそれほど深くは知らないため、底に眠るメタファーは感じられなかったのが残念。特にマーシャルアーツの師匠的な存在の人の意味は初見ではわからなかった。

アルフォンソ・キュアロンの1フレームにこだわる美的感覚にはまいかいあっけに取られるが、今作はさらに好き放題した感じ。
ゴールデングローブ賞とアカデミー賞がかかる。万引き家族とのおもろい勝負。
EditingTellUs

EditingTellUs